< 2020年8月号 >
特集/推進工事の施工管理における工程・品質・安全 |
総論:国土交通省、(公社)日本推進技術協会
解説:アースナビ推進工法協会、機動建設工業(株)、(株)協和エクシオ、サン・シールド(株)、地建興業(株)、(株)福田組、りんかい日産建設(株) ほか
連載:巻頭言/今月の推論/随筆/ゆうぞうさんの山紀行/会報/その他
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2020年7月号 
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特集/推進技術・最前線
今年の「下水道展’20大阪」は、8月18日から 21日までの4日間インテックス大阪で「Beyondみらいを変える!みらいが変わる!」をテーマに開催される予定でした。
しかし、2月中旬から新型コロナウイルスの感染者が連日のように増え続け、3月28日には全国で200人を超え危機感が増してきました。ついに4月7日に政府から緊急事態宣言が発出され、外出自粛が求められ下水道展主催者の
(公社)日本下水道協会から4月22日付けで「下水道展’20大阪」の中止が発表されました。
下水道展は昭和62年(1987)に「下水道展’87大阪」としてスタートし、東京および地方都市で毎年(平成2年(1990)は開催されず)開催されてきました。
近年は、老朽化した下水道管を改築更新する技術が数多く展示されるようになり、改築推進工法もそのうちのひとつの技術です。
今後の下水道展は、暮らしに密接した下水道を下水道界に関連した人だけはなく、少しでも多くの一般の方々に下水道の大切さを理解してもらえるようなイベントになればと願います。
そのような意味では、最近流行しているマンホールカードは下水道を身近なものに感じる良いアイディアだと思います。ご当地マンホールや蓋の図柄が変わることで見る目を変えられるマンホールカードは、下水道には多くのアイディアがまだ
まだ眠っていることの証左ではないでしょうか。
下水道展でも、昨今の外出自粛を見越していたかのようなVR下道展が展開しています。ことしは下水道展会場に足を運べませんが、昨年の下水道展’19 横浜の会場にバーチャルで参観が可能です。バーチャルならネット環境さえあれば「いつでも」「どこからでも」世界中から下水道展が楽しめます。
さて本誌7月号ですが、例年どおり
(公社)日本推進技術協会会員の下水道展への出展内容の見どころなどの紹介記事を予定しておりました。しかし前述のとおり中止となったため、推進技術の最新情報を満載した特集「推進技術・最前線」に企画を変更し本誌編集委員会の総力によりお届けいたします。下水道展会場で実物などを見ていただけるのが良いのですが、本特集も見応えのある内容になったのではないかと自負しており
ます。
我々は新型コロナウイルス感染症拡大により社会のさまざまな形態を変えることが求められています。「ピンチをチャンスに変える」精神で乗り切り、「みらいを変える!みらいが変わる!」を実現しようではありませんか。
(編集担当:宮地武士)
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特集/より良い工法選定に向けて
近年の推進工法をとりまく環境は、上下水道の面的な整備に代わり、都市部を中心に整備目的や施工条件(選択する施工法)についてニーズが多様化しています。
管路施設の使用目的を問わず、都心部では地下空間が高密度に利用され、施設が輻輳していることから、物理的制約、時間的制約等により新しい施設を敷設(占用し既設に接続する)することの難度が高まっています。また、当初の敷設から相当期間が経過して、改築更新ニーズが高まっている施設も相当数に及びますが、使用中(供用中)の機能を維持しつつ置換することが可能なのか等、多くの条件によって、施工手段を選択せざるを得ないことが少なくありません。
現場において安全、かつ安価な施工方法を採用するためには、何より設計計画の段階で、これら制約条件を適切に洗い出し、それに適う施工法を選択することが重要となってきますが、その判断に必要な情報が十分に入手できないまま、一般的な概念の中に収めて(実現が難しい選択肢を)あえて、もしくは、やむを得ず、選んでいることはないでしょうか。
下水道の場合、事業財源の事情から1)既存ストックを活用した浸水対策2)既存施設の耐震対策(補強)3)既設の改築による再構築等が事業目的になることが増えています。一般的に、特に1)でニーズが大きいと思われる「大断面」にはシールド工法が施工の自由度で優位2)は処分制限期間の問題もあるのでやむを得ないこともありますが3)に至っても管更生が原則、というような判断をしていることが多いように感じます。
確かにその判断が適切な場合が多いことは事実だろうと思います。ですが、ここで考えてみたのが、本当に必要な「機能」を適切に提供するという観点で頭を切り換えたら、もっと良い実現方法があるのではないか。頭の中に刷り込まれた「標準」「ふつう」が「常」と思い込んでいないか。このことを気づかせるための「施工技術の情報」とは何か。
本号では、これまでは「そもそも推進工法では難しい」「選択肢として推進工法はない」と切り捨ててきた条件であっても、推進工法が相対的に優れるところ、差別化できるところを明確にすることで「こんなことができるのなら、(推進工法を主体とした施設で)原点から考え方を変える」という、設計者の発想を刺激し、大胆に転換する情報を例示できればと考えました。
(編集担当:田口由明)
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特集/狭隘空間での施工
推進工事は、ライフライン建設に利用されることが多いことから、都市部で採用されることが多い工法です。しかし、建造物が密集している都市部では、施工のための用地確保は困難な状況にあります。このため、小スペースでの施工実施を求められることや道路占用での施工が求められることが多くなっています。道路や歩道を利用しての工事について、我が国の道路脇には電柱が存在することが多く、有効に使用できるスペースがさらに少ないです。同時に道路上部には多くの電線、ケーブルなどがあることから、上空の空間も狭いことになります。
道路占有の施工においては、自動車、歩行者が施工現場の直近を往来する状況であるため、安全確保についても留意する必要があり、さらに近隣の人々に対する環境への配慮が求められています。このような状況下での施工を実施してきた推進業界においては、様々な狭隘空間での施工を可能とする推進技術が活用され、交通や人々の生活に極力影響を与えない安全で確実な施工に配慮してきています。
そこで、本号では、道路、歩道占用などの狭隘空間での施工現場における創意工夫と克服した施工例を記述していただく特集としました。今後の推進工事の製品開発、推進工事施工の参考となればと思います。
(編集担当:佐藤徹)
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特集/脱炭素化に向けて
SDGsが社会全体に広がり、主流化しつつある中で、政府のアクションプランは「SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境に優しい魅力的なまちづくり」を掲げています。建設業界は、インフラをはじめとするハード面に加えて、地方創生に関わるまちづくりや地域振興にも関りが大きい産業であります。管路をはじめとしたインフラ整備、交通や防災、エネルギーや観光といった人々の暮らしにも関わっていることからその影響も大きく、SDGsを牽引していかなければならない立場に置かれています。
昨年9月に開催された国連気候行動サミットにおいて、65の国々が2050年までに「温室効果ガス排出ゼロ」を宣言し、世界各国は脱炭素化のスピードを競い主導権争いにしのぎを削っています。そして、昨年末にはCOP25が開催され、経済産業大臣と環境大臣が「化石燃料を主とした火力発電依存から脱却できない」現状をさらした発言によって化石賞という不名誉な賞を受賞し、世界から遅れをとっていることを示す結果となってしまいました。
日本政府はこのサミット前には「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(令和元年6月11日閣議決定)を示しており、その中で最終到達点として「脱炭素型社会」の実現を掲げています。
推進技術を取り巻く建設業ならびに建設資機材製造業等においては、SDGsが掲げる「誰も取り残さない」持続可能な社会とその仕組みを構築するために、脱炭素化を目指すあらたな方針を示し行動を起こす必要に迫られています。
建設業や製造業などでは、これまで主に化石燃料に大きな動力源を求め大量の温室効果ガスを排出してきました。これからは再生可能エネルギーによる動力源に切り替える努力が必要であり、社会の仕組みも変えていかなくてはなりません。また、CO2を吸収する技術や低炭素型のコンクリートなどの取り組みもみられるようになり、土木建設技術を利用してCO2の発生量を縮減するだけではなく、吸収したり、固定化するなど次世代の技術も散見されるようになりました。
各社が少しずつ脱炭素に向け取り組むことによって大きな流れをつくり脱炭素型社会の実現に近づくのではないかと考えます。いずれ公共工事の発注要件に、温室効果ガスの排出量や再生可能エネルギーの使用、脱炭素システムなどの採用などが明記されるようになることは容易に想像することができます。
本特集では、推進技術を取り巻く企業(団体)の脱炭素化に向けた取り組みを紹介することによって、脱炭素型社会の実現に向けたロードマップづくりの障害となっている課題や克服すべき事項を見出し、建設業界が担うべき役割を皆様と共有していきたいと思います。
(編集担当:人見隆)
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特集/内水氾濫軽減への取り組み
昨年の台風15号により千葉県下では大規模停電が発生し、電気・水道の供給停止が長く続き住民の方々が途方に暮れている様子が、また台風19号においては関東から東北地方にかけて大規模な浸水被害が発生し、その被災状況は、テレビ・新聞等で大々的に報道されました。最近発生した災害であり皆様の記憶に新しいと思います。
河川の氾濫や破堤に伴い住宅地に流入する濁流には目を覆うばかりであり、今後の復旧には膨大な費用と時間を要するでしょう。被災者の肉体的・精神的な疲労を危惧します。
これらの台風により某都市においては、100mm/hr近い豪雨に見舞われ内水氾濫が発生したという報道もありました。当該都市の説明によりますと市域全域を対象に5年確率(50mm/hr)による雨水対策を、都市機能の集中している地域に対しては10年確率(60mm/hr)により雨水整備を進めているとのことでした。しかし今回のような豪雨に対して既存の幹線および排水施設(ポンプ場、処理場)においては対応できないため内水氾濫が発生したそうです。
このように雨水を自然流下により排水できない区域(ポンプ排水区域)を抱える市町村は国内においても数多く存在すると思いますし、人口の集中している地域が多いです。今後より一層の内水氾濫対応策が求められます。
今月号では計画降雨以上の雨水対策として一義的にはポンプ施設の増設・能力アップが考えられますが、今月号は雨水計画の再検討をはじめ、増強管の新設、貯留施設の整備、既設管路のループ化、既設幹線の連結、貯留管の新設等において推進工法を用いた改善方法と、これらの整備に付随する技術を提供し、読者の皆様の参考にしていただきたいと考えております。
(編集担当:石北正道)
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特集/技術の伝承(人材の確保と育成)
近年、少子化によってどの業界も人手不足に頭を悩ませています。特に、建設業に関しては他の業種に比べて週休二日制が浸透していないことや、依然として3K職場の印象が根強く、若者離れの著しい業種と指摘されています。国や建設業界においては、一丸となって働き方改革を進め、魅力アップに努めているところですが、これまでのところ担い手不足の抜本的な解消に至っていません。
担い手の不足問題は、勢い培われた技術継承の阻害となるため、国や自治体、設計コンサルタント、建設業界等においては積極的にリクルート活動を行っています。
最近では、各企業とも学生向けの企業合同説明会への参加やインターンシップを導入し、早期の人材確保に努めています。また、OJTや集合研修などによる啓発活動を行い、「技術力の向上」とともに、作業環境の改善や「魅力ある職場環境」の創出に心掛け、離職率の低下施策にも取り組んでいます。推進工法業界に関しても「トンネル推進工」が特定技能に指定されるなど、環境づくりが進んでいます。技術・技能の伝承は、まさに人材の確保と育成がキーとなります。
本特集では、国や自治体、設計コンサルタント、ゼネコン、推進専業者など、それぞれの立場で、技術の伝承を如何にして効率よく行うかについての取り組みを紹介しています。我が国は先進諸国の中で最も早く、かつ、急速に少子高齢化を迎えつつあります。したがって手本のない、手探りの状態で少子高齢化に向かっての技術の継承を試みているものと思います。本特集で紹介する各企業の採っている事例や方策は、いずれは少子化や高齢化に追随する諸外国のみならず、我が国建設企業のお手本になればと考えています。
(編集担当:阿部勝男)
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特集/推進工法の海外展開の歩み
官民連携による本格的な日本の推進技術の海外進出が開始されてから数年を経過し大型工事の受注が現実のものとなっています。その原因としては国内市場の縮小に伴って、新たな市場を海外に求めなければならないというような受動的要因はもちろんありますが、下水道管路をはじめとする国内のインフラ整備を60年以上にわたって担ってきた日本の素晴らしい技術を、これから本格的にインフラ整備が開始される場所で再度活かしていきたいという積極的な考えが根本にあると思われます。
そのような考えのもと、官民がそれぞれの立場で積極的に活動してきた結果が結実してきていると考えられます。具体的には外務省、国土交通省、経済産業省をはじめとする関係官庁が先陣を切って相手国との橋渡しをしていただき、そのあとでも案件化調査、事業形成、技術者交流などの事業を一体となって進めることによって、より確実に迅速に海外展開ができるようになってきました。また、より実務に近く経験のある地方自治体の技術ノウハウを、そのような海外のプロジェクト形成に活かしていくような活動が多くなってきたことも大きな力となっています。
過去にも数回推進工法の海外展開をテーマとした特集を行ってきましたが、今月号ではより具体的に推進工法を含めた海外展開について、まず、国関係の官の立場、地方自治体の立場からその活動の意義、目的および現状の取り組みと将来展望などをご紹介していただきます。次に現実的に施工を行っている、あるいは施工を完了したプロジェクトについて、受注者からは実際の施工状況および苦労話を含めた問題点などを解説していただきます。最後に、海外におけるコンサルタントの立ち位置や業務の実情を紹介していただきます。
読者の中には海外進出をもうすでに行っている方々も多くおられると思いますが、まだ進出には踏み切れなくても興味を持たれている読者もたくさんおられることでしょう。今回の特集を読んでいただいて、さらにもう一歩海外進出に向けて前進されれば幸いですし、少なくとも日本の推進技術は海外から求められる技術であり、日本の推進技術にかかわる方々が「推進技術チーム日本」のようなチームとして手を携える必要性を少しでも理解していただければ、今回の特集の意義があったものと考えます。
(編集担当:森田弘昭)
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