< 2020年8月号 >
特集/推進工事の施工管理における工程・品質・安全 |
総論:国土交通省、(公社)日本推進技術協会
解説:アースナビ推進工法協会、機動建設工業(株)、(株)協和エクシオ、サン・シールド(株)、地建興業(株)、(株)福田組、りんかい日産建設(株) ほか
連載:巻頭言/今月の推論/随筆/ゆうぞうさんの山紀行/会報/その他
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特集/推進工法を支える注入技術材料の
発展と今後の役割
推進工法は、ライフラインの敷設を代表する様々な地下インフラへの適用がなされ、その利用は拡がっている。推進工法の要素技術の一つとして、いわゆる注入工法がある。推進工法において注入技術は、欠かすことのできない技術であり、推進力軽減、推進管周辺の補強・止水性の確保など様々な役割を果たしている。そして、注入技術の発展は、推進工法の適用範囲拡大を担ってきたと言える。例えば、滑材注入技術の進展による長距離化施工、裏込め注入技術の発展による周辺環境に対する影響の低減、添加材注入による掘削可能な土質の適用拡大などがあり、材料研究や施工方法の工夫、発案など多くの技術が生み出されてきた。
現在も推進工法は、超大口径管推進工法や改築推進工法などへの進化を継続しているところであるが、それらにも注入工法の新たな発想や技術開発から、工法発展や省力化などへの対応の可能性があると考えられる。ただし、注入施工は地山中における注入の影響が直視できない施工法であることから、誤った施工方法や材料選定の誤りから地山隆起や推進力増大などの影響の大きなトラブルが発生する事例もある。また注入工法発展の産物として様々な材料が開発され市販されているが、地山によってその効果が異なることが多いことも考慮する必要があり、施工管理には万全を期すことが求められる。
本号では、この推進工法における各種の注入技術や注入材に着目し、各種注入技術を利用した施工事例や注入施工への留意点について発表いただくとともに、最新の注入技術による推進工法の発展の可能性について論ずることを目的とした特集を企画しました。推進工法の発展に役立てていただくとともに、注入工法の工法発展の可能性についての参考となることを期待します。
(編集担当:佐藤徹)
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特集/推進工法における知的財産
最近の推進工法を支える技術は複雑多岐にわたっていますが、それに伴う技術開発も様々な創意や工夫がなされています。通常、何か新しい発明に成功すればその権利を保障するために特許などの知的財産権の登録を行ないますが、推進工法においても数え切れないくらいの知的財産登録がなされているようです。しかし、それらの権利が確実に守られているかというと、少し曖昧な面があるように感じています。
推進工法の発展普及にはこれからも活発な技術開発が必要ですが、その成果を保障して他者の盗用を防ぐために知的財産の登録制度があると思います。ということは、知的財産権が正しく保障・運用されることが、活発な技術開発を促す手段になるということです。しかし、現実には登録されている文書を見ると、我々素人には難解な表現が羅列されて一体何が発明の内容なのか理解できないケースであったり、同じような記載の特許がいくつもあって何が違うのか分からなかったりするケースがあります。つまり、意図的かどうかは別にして、推進工法における知的財産権制度はあまり正しく運用されていないのではないと思われます。製造業など他分野では海外も含めて厳格な運用がなされて、時には我々には想像もつかないような高額な特許侵害の補償金が支払われているようです。しかし、推進工法の分野ではそのような話は聞いたことがなく、特許などの知的財産登録をする価値がどこにあるのかよく分からないのが現実です。(読者の皆さんはしっかりと把握されているかもしれませんが)
掘進機の構造をはじめとしてジャッキや坑口などの推進設備の機能や形状に係わる発明は、物理的に表現されるためその内容は誰の目にも明らかですが、様々な施工方法に係わる知的財産については表現の仕方によってその内容が微妙に異なります。そもそも推進工法の分野で知的財産権は必要なのかどうかも含めて考えてみる必要があるようです。
(編集担当:中野正明)
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特集/低耐荷力方式
礫・帯水層・長距離への挑戦
推進工法は、開削では施工が困難な軌道下の横断のための工法として60余年前に登場しました。当時は先頭管に刃口をつけ人力で掘削排土する方法でした。その後シールド技術から転用された泥水方式や土圧方式などの掘削排土方法により適用範囲を広げていきました。
しかし、坑内での人力作業が必要だったことから最小径に制限があり、計画呼び径250の場合でも推進工法を採用するためには呼び径800以上にサイズアップする必要がありました。
推進工法でも計画呼び径のまま推進したいとのニーズから最初の大きな技術革新が行われました。小口径管推進です。方向制御と掘削排土を遠隔操作することにより、坑内での人力作業を排除し、最小呼び径の制約をクリアしました。
次の課題は管材でした。管に推進力をすべて作用させるそれまでの方法では、管が作用する推進力に耐えられなければなりません。開削の小口径管で主流であった塩ビ管は、推進力に対する耐荷力が小さく、ごく短い距離しか推進できませんでした。そのため、小口径管推進でも管材は大中口径管推進と同様に鉄筋コンクリート管が主流でした。
そこで、第二の技術革新の結果登場したのが低耐荷力方式推進です。これは推進抵抗力を先導体と推進管に分けて負担させることにより、管に作用する推進力を低減し、耐荷力の小さな管材でも実用上十分な距離の推進を可能としました。
低耐荷力方式推進が登場してから25年が経過し、現在は推進延長において小口径管推進工法全体の60%を占めるまでになっています。
低耐荷力方式はこれで完成したのでしょうか?いいえ、まだ開削や高耐荷力方式と比べて劣る部分が多く残っています。土質を中心とした適用範囲、1スパンの最大延長、開削工事で使われているポリエチレン管に適用できないなどです。
本特集では、これら課題のうち礫と帯水層への適用と長距離推進を中心とした、各工法の取組みを紹介します。また、これによる下水道管きょ以外の新たな分野への用途拡大についても取り上げます。
(編集担当:青木健一)
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特集/推進技術
─多様性を発揮して大活躍─ その2
下水道の普及率の向上に大きな役割を果たしている推進工法ですが、先月号ではわが国の国民生活に欠かせない下水道以外の多くの分野で活躍している状況が紹介されました。そこでは、簡潔さ、速効性、経済性、そして安心安全で環境に対して優しいなど、非開削工法である推進工法が、まさに時代が要請する技術として成熟していることに納得された方も多かったのではないかと思います。
地中に構造物を構築する現在の推進技術は、狭隘で厳しい大地に生き続けなければならない私たち日本人の挑戦結果であると言っても過言ではありません。推進工法は立坑から次々に構造物を押し出して地中に必要空間を創造します。立坑から押し出す函体の内部では、昔のように人力掘削作業が主体ではなく、密閉型掘進機によって作業の安全性は格段に向上しました。この密閉型推進工法においては、人力作業は掘削の補助的な役割、掘進精度管理や掘進機をはじめとする諸設備のメンテナンスが主な仕事になっています。しかし、わが国の複雑な地盤構成は時として掘進作業を極めて困難なものとし、トラブルを発生させることも多く、密閉型推進工法といっても、全て掘進機まかせというわけにはいきません。泥濃式では、切羽圧力に重要な役割を果たす排土バルブの操作、さらには大きな礫は吸引排土ではなく、別途、選別作業によってバケットに集積して排出するなど、人力作業も極めて重要な役割を担っています。泥濃式に限らず、大中口径管推進工法では、坑内作業が可能ということで、少なからず人力に期待するのはやむを得ないのですが、呼び径800未満の小口径管推進工法ではそれは不可能です。
坑内に入れないという制約は、小口径管推進工法全体の技術レベルを向上させることとなり、それが推進工法の多様性への一因ともなりました。今回の特集号では、この向上した小口径管推進工法の推進技術が、これまで考えられなかった分野で採用されている事例を紹介いたします。小口径管推進工法ならではの多様性を理解していただき、推進工法が有している未知なる用途に想像を巡らせて頂ければ幸いです。
なお、先月号と今月号の特集では、推進工法が下水道以外で多用されている例を紹介しましたが、そこでは、施工が完了した推進管内にさらに本管として配管する技術が必要となります。長距離、曲線施工を確実にこなす推進工法が、今後さらに用途を拡大するなら、下水道管路では考えられない配管技術もまた大いに注目されるに違いありません。今回は、その中でも特長的な技術を紹介いたします。
(編集担当:川相 章)
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特集/推進技術
─多様性を発揮して大活躍─ その1
推進工法は、下水道分野だけでなく、国民生活を支える様々なインフラ整備技術として確実にその適用性を拡大しています。下水道以外の構造物を構築する場所は道路下に留まらないばかりか、断面形状や構造物の大きさは様々で、また、敷設勾配について言えば下水道管きょの‰ではなく%単位で急勾配施工が要求されることがあります。現在の推進工法は、このような形状や大きさが異なる構造物を任意な位置に精度良く敷設できるまでに進歩しています。これも、これまで下水道分野において長距離、急曲線、大断面、異形断面などの多くの課題に挑戦し、技術力を磨き上げた結果ということは言うまでもありません。
現在では、都市部における人道や幹線道路の立体交差、エレルギー供給パイプラインの河川・港湾部の長距離横断、鉄道や重要構造物の横断、海水の淡水化、養殖のための海洋水採取や農業用水の供給ライン、地滑り防止のための水抜きパイプの敷設や、環境保全を目的とした観光資源確保など、現在の推進工法に対する期待度は、十数年前には想像もできなかったほど拡大しています。
多様性を発揮して活躍する推進工法ですが、そこでは規格化された推進管を多量に敷設する下水道管きょとは異なり、特異な条件や仕様でもって計画・施工されるために、過去の事例がそのまま参考にならない難しさがあります。しかし、推進工法が有している簡便さ、迅速性や経済性、掘進機の回収技術、多様な管材・函体に対応できる特長、さらには遠隔操作による高度精度管理技術などによって問題を乗り越えています。
本号では、推進工法が下水道分野以外で経験した難しさ、それを克服するための計画設計や施工管理での対応策などについて、新たな分野に挑戦しようとする関係者の方々の一助となるべく内容が提供できればと考えています。
閉塞感が漂う現在社会において、充実した生活環境の創造に活躍する推進技術へのさらなる信頼と、新たな分野への挑戦を期待します。
(編集担当:川相 章)
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あらがきゆい
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特集/ここまで進化した推進技術
昭和23年、軌道下に内径600mmの鋳鉄管が推進工法により敷設されたのがわが国最初の推進工事である。戦後の復興期から昭和30年代前半にかけわが国の社会資本整備が進む中、地中埋設管は開削工法で敷設されるのが一般的であり、推進工法は極めて特殊な条件でのみ使用される工法であった。
昭和30年代後半から、わが国では、工業化による急速な経済成長に伴い、都市部の人口が急速に増加しつつあり、この時期、東京オリンピックや東海道新幹線など国家的な社会資本整備が急速に進められるとともに、都市部では交通施設、エネルギー供給施設、下水道施設などライフラインの整備が急速に進められた。このような都市機能の向上を図る各種社会資本の建設工事において、シールド工法および推進工法は都市トンネルの施工技術として利用され、わが国において急速な発展を遂げることになった。
シールド工事では、昭和40年に泥水式シールドが、また昭和49年に土圧式シールドがわが国で初めて採用された。しかしながら、この時期、推進工事はまだまだ機械化が進んでおらず、狭隘なトンネルの中での掘削作業は極めで危険を伴う苦渋作業であることから、作業の機械化、省力化が求められた。
この当時の推進工法は?オープン掘削であるため切羽が崩壊しやすい?掘削土砂の搬出が人力であり極めて効率が悪い?施工距離が施工機材の性能や管材の制約から長距離に適さない?坑内作業が極めて苦渋である、等の問題があった。
しかしながら、施工機械、施工材料、通信・制御および測量技術の急速な発展と、推進工事に関わる技術者によるたゆまない工法の改良・開発により、これらの問題は今日では過去のものとなった。現在は、長距離、急曲線、急速施工をさらに進めることはもとより、改築推進や超大口径管推進など、施工能力の向上や適用範囲の拡大に向けた新たな分野への開発が進められている。
本号では、このように世界の最高水準を行くわが国の推進工法に関する技術情報について、できる限り最新のものを読者の皆さんに紹介できるよう努めた。本特集が読者の方々の知識を深めるとともに、推進工法が社会資本整備の拡充のためにより一層活用される一助になれば幸いです。
(編集担当:西口公二)
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特集/創刊300号記念
─非開削推進技術の明日をよむ─
昭和62年6月15日に創刊第1号を発行した本誌もお陰さまを持ちまして6月号で「創刊300号」を迎えることができました。まずは創刊以来26年間、ご購読いただき続けました読者の皆様、企画・編集に携わっていただいた委員の皆様、そして、その時々に最新の技術情報や行政情報、また、提言などを判りやすくご紹介いただいた執筆者の方々をはじめ、発行をご支援いただきました方々に深く感謝申し上げる次第です。
顧みますと、本誌を創刊した昭和六十年代当初は、下水道事業においては、総額12兆2千億円という巨費を投じて、35%であった普及率を46%までに向上させようという第6次下水道整備五箇年計画が進められていました。当時の状況を経済誌「ダイヤモンド」は特集で「日本経済の底上げに下水道事業は30兆円の経済効果を齎す」とその投資規模の大きさと社会的影響を評価しています。
こうした時代背景のもと推進業界は、それまでそれぞれに組織活動していた推進工法関連団体を、ゼネコン、推進専業者、掘進機および管材メーカなど関連業界が大同団結して「日本推進工法協会」を設立、国の内外で期待される非開削推進技術の確立と、更なる普及に向け、会員が一致協力して標準設計図書の整備、専門技術者の育成、安全施工体制の監視などを主な柱として活動が始まりました。工事の発注者、コンサルタント、施工者間の情報の共有化をめざして機関誌「月刊推進技術」も創刊されました。
創刊300号を迎える月刊推進技術の機関誌としての発行趣旨は協会設立時と変わるものではありませんが、会員を取り巻く環境と推進技術は別世界のように変化し続けています。
非開削推進技術の進化は、最初、掘削・排土・管の挿入など施工の全てを人力で行なっていましたが、今は、一部の工区を除いて機械化・自動化され、施工精度もミリ単位の高度な施工管理技術が確立されてきました。これにより、非開削推進技術が採用される工事も、管渠の施工のみならず、アンダーパス、地下の駅舎や倉庫、貯留施設など、地下構造物全般に多用され始めています。また、日本の下水道整備で育った非開削推進技術には、海外からも熱い視線が寄せられるようになってきました。
一方、世界でも稀に見る少子高齢化社会と経済および産業のグローバル化が一段と進む中で、非開削推進技術の市場も大きく様変わりしようとしています。
300号記念特集のコンセプトは、変化に対応する「非開削推進技術の明日をよむ」です。
この特集を通じて読者に読み取ってほしい視点は
?世代をどう繋いでいくのか(二代目からの提言)
?それぞれの課題にどう取り組めばよいか(エキスパートからの提言)
?これまでの歴史から何が見えてくるのか(歴史に残る報文の復刻)
400号に向って熱い情熱をお伝えします。
(編集担当:小田泰平)
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特集/推進工事を支える測量技術
〜夢から現実への挑戦〜
推進工事はシールド等に比較して設備が簡便で、ある意味手軽な工法と言える。しかしこの推進の測量は、短い基準線を頼りとした解放トラバー測量であり、しかも管体そのものが動くため都度基準点から計測することを強いられる。大中口径の推進工事も管内測量は非常な苦渋作業となり、人が入れない小口径推進では、地上からの間接測量が多く、管内を直接測量する自動測量技術も工法と一体化されたものが多い。
近年、推進技術は従来からある下水道・電気・ガスのような管路だけでなく大口径の貯留管にも数多く採用され、輻輳した都市の地下空間利用への応用が期待されている。また小口径管についても、地上からの開削工法が難しいもの、立坑設置が困難なもの、道路線形なりに施工するといった多様なニーズも増えている。この小口径推進にも土被りの深いものや、地上との間に障害物があるもの、さらに河川横断のように地上からの測量では難しいものが多くなってる。
推進工事に自動測量システムが導入されてから約15年が経過し、この間多くの技術改良がなされてきた。しかし推進工事の特性から測量技術がなかなか進展しないのも実情である。つまり市場の規模や企業単位の開発体制、開発された技術の汎用性が乏しい等々の事情で技術を支えきれないという面も出てきている。
推進工事において測量は重要な要素技術である。熟練労働者不足による技術力低下も構造的な問題となっておりますます自動化技術は必要となる。また時代の変化に伴い多様なニーズへの対応も必要である。これらの要求に推進技術が答えるためには、測量技術の発展が不可欠である。ここでは、推進の測量技術の新しい挑戦や既存技術の改良・それらによる新しい実績を述べるとともに測量技術をシステムとして維持していくのに必要な地道な日々の積み重ねにも言及したいと考えている。また推進の測量技術は多岐に渡るためそれぞれに特徴がある。それを明確にすることで適用範囲が見えてくると考える。
(編集担当:稲葉富男)
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特集/下水道再構築の切り札
〜改築推進工法〜
下水道は、その普及率が平成22年度末に75.1%に達し、都市内の雨水排除、汚水排除、河川の水質汚濁の防止を図る等、生活環境の改善に大きな成果をあげています。今後は、発生汚泥からの資源回収等、わが国の循環型社会の実現のためには極めて重要な役割を果たすことになります。
わが国の下水道整備は、昭和30年以降急激に進み、現在、管きょの総延長は、昭和40年代の高度成長以降に建設されたものを含めて43.5万kmを超えています。しかし、全国には、建設後50年を超える管きょは約8,000km程度あり、老朽化した管きょを原因として年間4000件以上の道路陥没事故が発生しています。今後は、それらの維持管理だけでなく、将来を見据えた再構築をどのように進めるかが大きな課題と言えます。
老朽した管きょの再構築方法としては、既設管の内面にライニング管を構築する「更生工法」、既設管と同じ場所に新たに管を構築する「敷設替工法」、既設管とは別のルートの新たに管を構築する「新設管・増補管敷設」の3つに分類されています。既設管の劣化、損傷の程度が比較的軽度な場合は「更生工法」が広く採用されていますが、損傷が著しい場合は「更生工法」の採用は困難となり、「敷設替工法」または「新設管・増補管敷設」を採用することとなります。地下埋設物の輻輳等により別ルートの確保が困難な場合は、既設管と同じ位置に新たに管きょを敷設する「敷設替工法」の採用となります。「敷設替工法」はさらに開削工法と非開削工法に分類されます。埋設物および交通状況等の理由により開削での管きょの敷設が困難な場合は、市民の生活環境への影響を最小限に抑えることが可能な非開削工法である『改築推進工法』の採用となります。
この『改築推進工法』は、既設管の破砕・排除方法により5つの方式に分類されており、2010年12月号特集では自治体の取り組み状況および各工法の概要等を紹介しております。
敷設替えを開削工法ではなく、改築推進工法によって行う場合、各改築推進工法と老朽管について、その適用性や得失を十分理解しておく必要があります。
今回の特集の目的は、適用管種、既設管の折損およびずれの状況、適用延長、施工時における仮排水等を考慮した老朽管の敷設替えについてだけでなく、下水道管きょの再構築において、改築推進工法が、健全でかつ機能アップした下水道管きょの創造を担うことへの期待もあります。本特集『改築推進工法』が計画設計、施工に携わる方々の参考になれば幸いです。
(編集担当:前田公洋)
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特集/自在型推進工法
〜管路構築方法の新しい時代を切り拓く〜
推進工法が産声をあげた1948年からすでに63年が経過し、現在の推進技術は、従来では考えられなかったような難易度の高い工事をも克服しています。より長く、より深く、そして曲線線形も平面、縦断と自在に推進管を敷設できるまでになりました。
先導体(掘進機)がその前面の土を取り除くことで、立坑から次々に推進管を送り出すことができるのですが、土を取り除くための掘削、掘削した土を地上に排出する技術は簡単なことではありません。掘削地盤の硬さに対応できる先導体(掘進機)、正確に掘り進むための精度管理、掘った土を地上に効率良く排出する技術、これらが全てかみ合ってこそ高度な推進工事が可能となっているのです。
このように、長距離・曲線施工を克服してきた推進技術ですが、推進途中に急曲線を含む場合、その急曲線以降に配置される推進管は全てその曲線を通過できる管を必要とします。当然ながら、急曲線を通過できる管は通常管に比べ割高です。このように技術的に可能とはいえ、経済性や工期面からは必ずしも推進工法で施工することが最善とは言い切れない場合があります。そこで考えられたのが推進工法とシールド工法の併用工法です。この工法は、まず推進工法でなだらかな曲線を含む直線区間を推進させ、その後、急曲線以降では先導体(掘進機)の後方でセグメントを組み立てる、いわゆるシールド工法に変更させて長距離施工を行うというものです。
次ぎに、鉄道などの重要構造物や、河川や運河を横断する長距離推進のように、推進管外周面の地山の安定確保と推進抵抗力の低減が必要な場合、推進管(鋼管)を外管として推進させた後、その内部を一回り小さい径の推進管を推進させることで可能とする方法もあります。この場合には、同一先導体(掘進機)の掘削径を変更させることが必要になります。その他、掘削方式と掘削した土砂の排出方法については、泥水式は流体輸送で、土圧式は圧送ポンプやあるいはベルトコンベヤとバケットで、泥濃式推進工法であれば吸引排土方式のように固定化されていますが、これらを土質に応じて変化させて組み合わせる方法もあります。このように、1スパンの間に同一の掘進機によって掘削方法、掘削径、排土方法また敷設する管材を変更することができる自在型推進工法が見られるようになりました。これは、まさに時代が要請する多種多様な過酷な条件に、賢く対応できる「スマート推進工法」であるとも言えます。今回の特集では、この自在型の推進工法について、それが開発された経緯、それらが採用されるに至った背景、採用にあたっての留意点、さらに今後の展望などについて紹介したいと考えております。
(編集担当:川相章)
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特集/雨に強い都市づくりと推進工法
昨年9月に相次いで上陸した台風12号と15号により、日本列島に大きな被害をもたらしました。
各都市では、梅雨や台風などによる集中豪雨に備えるため、「安全な都市づくり」の一環として『総合的な治水対策』を進めています。
総合的な治水対策では、河道改修や河川遊水池などの河川に係わる整備のほか、下水道施設として、ポンプ場や雨水幹線、雨水調整池の整備を、また、流域対策として田畑や緑地の保全など、保水機能の維持・向上を図るための施策を併せて推進しています。
都市部での中小河川や下水道においては、既に、5年に1回程度の降雨確率に対応する整備水準によって実施されていますが、さらに資産集積と人口集中が著しい中心市街地部などでは、概ね10年に1回発生する降雨に対応するための整備も同時に進められています。
これらの内水対策としての浸水安全度の向上には、雨水増強管の整備とともに、流域内の公園や校庭などの公共施設用地を活用した雨水の「地下貯留施設」のほか、トレンチ管、浸透ますなどの「浸透施設」の整備が従来から行われてきましたが、最近では工事を着手してから完成するまでの工事期間の短い、即効性の高い『大口径管推進工法による雨水貯留管』が着目されて実績を挙げつつあります。
本特集では、自治体からの“各都市における雨水対策事業の取り組み状況と併せ、その実効手段としての推進工法への期待と係わり”のほか、施工者や管材メーカ側からも、これまで進められてきた大中口径管や内径3,000mmを超える「超大口径管推進工法」などの事例を紹介し、施工上の留意点と術的課題にも言及しております。
本特集を通して、雨水整備の設計に携わる自治体や設計コンサルタント等の職員の方々には、最近の大口径および超大口径管推進工法の持つ多様な用途と潜在的な可能性を見出して頂き、計画・設計に活用して頂ければ幸いと思っています。
(編集担当:阿部勝男)
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特集/我が推進技術 海外進出に向けて
「月刊推進技術」ご愛読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。2012年、平成24年、辰年のスタートです。「辰」は、「龍(竜)」の字もあてますし、その読みは「たつ」です。現状から立ち上がり、龍のごとく天を駆ける一年としたいものです。そこで、今年の新春号の特集テーマは、昨年に引き続き、「我が推進技術海外進出に向けて」と、いたしました。
さて、昨年は、何と言っても、3月11日に発生した東日本大震災でした。2万人に近い多くの犠牲者を出し、津波により岩手、宮城県の太平洋沿岸の多くの都市がその土台から流され、さらに、福島県の東京電力福島第一原子力発電所では、4つの原子炉が壊滅状態とされました。その収束の目途は未だ明確とはされていません。また、千葉県浦安市などで見られた、地震による地盤の液状化問題も、広く社会の注目を集めました。そうしたなかでも、被災地では、復旧から復興に向け、できること、できるところから一歩づつ、着実な足取りが見られます。住民の方々の地道な努力が、国民の崇高な姿として、世界から賞賛を浴びています。
もう一つ、世界から注目と賞賛を集めたのは、女子サッカー「なでしこジャパン」の活躍でした。W杯で、強敵アメリカを不屈の精神力でPK戦の末下し、世界の頂点に立ちました。その疲れも癒えない時、今年のロンドン五輪の出場権を賭けたアジア最終予選では、不敗の1位でそれを獲得しました。正しく、“世界のジャパン女子サッカー”となりました。これに続けと、今年は、“世界のジャパン推進技術”としたいものです。夢ではありません。その実力は十分にあることは、関係の皆様が承知しています。それをどう進めていくか、そこが課題です。
民主党政権は、3年目を迎えました。政権交代当初より、我国の優れた建設技術を、今後、海外におけるインフラ整備に積極的に活用すること、すなわち、インフラビジネスの海外進出に強い意欲を示していました。当時、国土交通大臣に就任された前原氏は、日本の誇れる建設技術として、原子力発電、新幹線、それに水インフラの3つを挙げました。
その後、原子力発電と新幹線については、いくつかの具体的な案件が取沙汰されたようですが、未だ、プロジェクト化は見えておりません。一方、水インフラ事業については、ベトナムやインドネシア、インドなどを対象国として、政府高官レベルでの基本協議が着実に進められ、その成果も見えつつあります。水インフラには上水道とともに下水道の整備が見込まれます。下水道でも、都市衛生の面から汚水管の整備はもとより、東南アジア諸国の人口100万人を超える“メガ都市”では、降雨浸水から都市機能を守るための大規模な排水管網の整備も喫緊の課題とされます。超過密した都市内の道路下に大口径管を敷設するには、非開削手法の推進工法が有力です。そこに、我国が永年にわたり築き上げた世界に誇る高水準の推進技術にとって、大いなる活躍舞台があることは確実です。
そこで、今後、どういうプロセスで我国の推進技術を円滑に海外へ進出させていくか、そのために現時点で何が必要で、それをどうするか、が課題となります。
(編集担当:石川和秀)
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