< 2020年8月号 >
特集/推進工事の施工管理における工程・品質・安全 |
総論:国土交通省、(公社)日本推進技術協会
解説:アースナビ推進工法協会、機動建設工業(株)、(株)協和エクシオ、サン・シールド(株)、地建興業(株)、(株)福田組、りんかい日産建設(株) ほか
連載:巻頭言/今月の推論/随筆/ゆうぞうさんの山紀行/会報/その他
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特集/推進工事における安全確保のための施策
安全確保、労働災害防止は、建設工事にとっての最重要課題です。推進工事も、ライフラインの敷設を代表する様々な地下インフラへの適用がなされ、社会に対する貢献度が認知されている中、様々な創意工夫で工事の安全施工、労働災害防止を実施しなければなりません。当然、地下における推進工事特有の災害に対応する安全確保のための対策が行われているはずです。
災害には、内的要因によるもの、外的要因によるものが考えられますが、内的要因であれば、推進工法はシールド工事と異なり狭い空間での施工である上に、近年では狭隘な場所での施工が多くなりさらに作業環境は悪化していることへの災害への対応が求められています。また外的要因においては、地下空間には障害物(有害ガス、鋼製物、空洞など)が存在することへの安全対応も必要です。また非常に多くの種類がある推進工法では、工法の適用を誤ると事故に繋がる可能性があるため、設計や計画の段階からの安全な施工への配慮が求められると考えられ、あらゆる観点からの安全確保の論議が必要となります。
そこで、今月号の特集は推進工事における安全施工のための施策とし、推進工事の安全対策のための技術や災害防止の対応などについて、内的要因、外的要因の両視点への対応について解説頂いています。また、推進工事における安全施設や機材なども、工事の進捗の妨げにならない工夫がなされたものが様々開発されていますので、それらについての情報も掲載しました。本特集の安全確保を実現するための技術動向や災害への取り組みとその対応を一読頂いて、推進工事の安全確保に役立てていただくとともに、安全意識が高まり、事故のない推進工事となることを期待します。
(編集担当:佐藤 徹)
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特集/特殊条件下での発進と到達
昨今、下水道管きょの老朽化による道路陥没が多発している。また、これまでに経験したことのないような大雨が猛威をふるい、大都市では浸水被害に対する脅威が高まっている。これらの対策として、老朽化した埋設管の補修・改築、また、排水機能や貯留機能を向上させるための合流改善、増強管や雨水貯留管の新設等の整備が急がれており、「管きょ老朽化対策」や「雨水浸水対策」等の事業が進められている。さらに、都市部では通信、物流、移動等の効率化のため、各種インフラ施設のネットワーク化の社会的要請も高い。
これらの事業の遂行において推進工法は大いに活用されているが、都市部では、上下水道、ガス、電気、通信等の地下埋設物が輻輳化し、さらに地下深部には共同溝、地下鉄、道路トンネルなどの移設不能な大型の重要構造物が建設されていることから立坑の築造が困難な場合がある。また、道路の交通量が多く規制が困難な道路や、地域的な状況などにより工事による振動・騒音などの周辺環境に対する影響から立坑の設置が困難な場合がある。このようなことから、近年、立坑を設置することなくマンホールや管きょ等の既設構造物から直接掘進機を発進あるいは到達させる工事が増えてきている。
このような施工法は、一般的な施工法である立坑を築造し地盤改良を施しながら新設管きょの築造を行う方法に比べ、掘進力に対する既設構造物の補強や既設構造物に開口部を設けることに対する構造物の補強、管きょ接合部の地盤改良方法や止水方法、あるいは掘進機の投入・回収方法など技術的課題は多い。
しかしながら、既設構造物からの発進・既設構造物への到達は、既設埋設物の回避や交通障害および周辺環境への悪影響の防止だけでなく、場合によっては到達立坑の省略によるコスト縮減効果が見込めることや掘削土量の減少による廃棄物発生量の低減を図ることができるなどのメリットも期待できる方法である。
今月の特集は、このような発進立坑あるいは到達立坑を造らず、既設構造物から発進あるいは既設構造物に到達する工事に焦点をあて、これらの事例を紹介するとともに、技術的課題と今後の方向性を探るものである。
(編集担当:西口公二)
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特集/排土排泥処理の現状
〜減量化と再利用〜
日本の推進工事の技術は長距離施工、曲線施工、小土被り施工、大土被り(大深度)施工と進展を続け最近では施工延長1,000mを超すものや、φ4,000mmの超大口径管も施工されるようになりました。また小口径管推進においても推進管の多様化が進み、曲線施工も珍しくなくなっています。これらは新しい施工技術の開発で支えられており、そのためには掘進機の開発、排土技術の向上、推進管の改良、新しい滑材の研究開発、測量技術の自動化等の発展があります。
さて近年「持続可能な発展」を目指すため地球環境への配慮が問われています。それには低炭素化社会、生物多様性の保全、循環型社会の形成が基本になります。推進工事においてもその役目を果たす必要があります。ここでは推進工事で発生する「掘削残土」に注目したいと思います。推進工事の掘削残土は、その性状から廃棄物処理法で産業廃棄物として扱われます。産業廃棄物に対する基本原則は「発生抑制の徹底・再生利用の促進・適正処理の推進」という方法で行われます。ところが推進工事における残土処理対策は、その短い工期・発生残土のボリューム・対策費用面等の理由から十分とは言えないところがあります。
本特集では「排土排泥処理の現状」と題して、推進工事における残土処理に注目し設計と実際に現場で行われている処理方法に焦点をあてたいと思います。主として泥土圧式および泥濃式推進工事の掘削残土は建設汚泥と判断され、産業廃棄物として処理されているのが一般的です。しかしこの汚泥の判断にあいまいさがあり、現場では多様な対応を迫られています。これらの現状を知ることで、問題点と課題が明確になると考えております。ここでは建設汚泥に対する考え方を明確にするとともに、推進工事における建設残土のあり方が示せれば幸いと考えます。まず基礎となっている建設汚泥再生利用に関する基本をおさらいし、現状の推進工事の建設残土についての問題点を提議します。また最近の技術開発による推進工事の「排土排泥処理技術」の紹介を行い、さらに異なった目線による「排土排泥処理技術への提言」として、排土排泥処理のあるべき方向と技術的考察についても触れたいと考えています。
(編集担当:稲葉富男)
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特集/基盤整備事業の管路築造における
推進工法の動向
近年、社会生活を営む上で不可欠な基盤設備である上水道、下水道、電気、ガス、通信等のライフラインを提供しているライフライン事業者には、一昨年に発生した東日本大震災後、更に必要性が高くなったBCP(事業継続計画)と環境対策が企業責任として求められています。
BCPとは、事業者が激甚災害及びテロ等に遭遇した場合を想定し、ライフライン設備の早期復旧と事業継続を目指して策定する計画で、事業者は健全な設備で事業を運営することが重要となります。設備の老朽化が進んでいる場合や十分な耐震設計に基づいた設備でない場合は、有事の際にライフラインとして機能を十分に発揮することが不可能となるため、各事業者においては、日常における設備点検、点検結果に基づく計画的な補修、更改が必要となります。
環境対策では、電力消費量の低減は当然ながら、地下に埋設されるライフライン設備の構築時に地球環境保護の観点から施工現場から排出される産業廃棄物を限りなくゼロにする(ゼロエミッション)取組みが必要で、その際に大いに効果を発揮することが可能な施工手段が推進工法です。
各事業で構築される設備が異なることから、独自に推進工法を開発しているライフライン事業者もあり、多くの推進工法があります。一般的には、円形の推進管を元押装置により直接押込む方法で、推進管の大きさにより小口径管推進工法と中大口径管推進工法に大きく分類されていますが、線路や道路下における通路及び水路等の構築には、矩形のプレキャストボックスを推進する工法もあり、更には立坑を必要としない推進工法や最近では老朽化した管を推進で置き換える改築推進工法も導入されています。
特に都市部においては、防災上や景観上の観点から各事業者における施設の地下化が進められており、地下空間に頼らざるを得ない状況にあります。生活基盤設備のみでなく、地下駐車場及び商業施設等を有効に収容するために都市に残された貴重な財産である地下空間を構築する必要があります。そのため施工方法として、道路交通への影響が少なく、環境面でも有効である非開削での施工が求められています。
今回の特集では、下水道事業を除くライフライン事業における推進工法の現状と課題及び各企業間における共同収容等も考慮した今後の展望等を各事業者の方々に紹介して頂き、推進工法の更なる適用拡大を目指して各工法及び管材の開発の一助になることを期待しております。
(編集担当:前田公洋)
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特集/管路再構築時代に求められている
「改築更新技術」とは
昨年12月の中央自動車道笹子トンネル天井板崩事故で9名の尊い命が失われたことは、未だ記憶に新しいところです。特に、我々、社会インフラに関わる者にとっては、1967年に米国オハイオ州ウエスト・バージニアにおけるシルバーブリッジの崩壊事故(死者46名)等の貴重な教訓を得ており、国内でも高度成長期に抱えた巨大な資産は30余年前から既に「維持管理の時代へ」と認識されていました。近年でも、水道管の破裂・漏水事故、下水道でも道路陥没に繋がる老朽化が、各方面で社会的問題として取り上げられていただけに、非常に残念な事故となりました。
平成25年に入り補正予算や新年度予算では、国民の安心・安全に関わるインフラの保全対策に相当のシェアが見込まれています。ライフラインの場合、事故発生の損失は、直接的なもの以外に、生産・流通等の間接被害が膨大となることから、「予防保全」の導入が特に重要となります。
加えて今後は、少子高齢化、人口減少が進み、維持管理財源の確保が困難となることは明白であり、現在保有する資産の適正な管理や計画的な改築更新を行うばかりでなく、その後の“社会インフラの管理リスク”“財源負担”を軽減することが、現在の我々の重要な責務となります。
現在、個別資産のみでなく社会全体のリスクに拡大することが懸念され、ストックマネジメント、あるいは、パブリック・アセットマネジメントの導入が注目されています。「地震対策事業」もその一環と捉えることができますが、具体的な対策として、上水道では継ぎ手の耐震性を有する新たな管路への敷設替えが全国的に進められています。同じライフラインでも下水道では、施工の困難性を主な理由に、既設管の内面を更生する技術が多く採用されています。一方で、改築推進工法には、「静的破砕」「衝撃破砕」「回転破砕」「引抜」の方式が実用化されていますが、他の技術に比して採用実績が少ないように思います。果たして“将来のリスク”を包括的に考えた場合、どのような技術を採用することが最適な選択なのでしょうか。
本稿では、改築技術についての課題を各分野の技術者に投じ、“将来のリスクの軽減”という命題に対し、現状の技術・施策における問題点と展望について論じて頂きたいと考えました。
都市の地下空間では、多種多様なライフラインが国民の“安全・安心”そして“快適”を支えています。この特集が、サスティナブルなライフライン・システムの構築の一助となり、僅かでも教訓となれば幸いです。
(編集担当:田口由明)
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特集/ここまで進化した推進技術
下水道の普及とともに発展した推進工法ですが、現在では新たな道を模索しているように思えます。下水道の普及率が75%を超え、公共投資もさほど期待できないとなると、推進技術はどこでその能力を発揮することができるのでしょうか。
地球誕生45億年の遙か太古の時代から、生物が、姿、形を変えて進化してきた背景には、子孫を残すという本能に基づいた強い意志があり、そのための生き抜く工夫を常に行動に移せたからだと思います。山林や水中で擬態を示して、動物や鳥たちの餌食とならないように進化した生物に対しては感嘆するばかりですが、そのような方法ではなく、もっと積極的に進化を求めたのがわれわれ人類です。
わが国の推進技術が世界でも類をみないほど進化できたのは、これまで推進に携わってきた熱意ある先輩諸氏の賜物です。推進工法を取り巻く厳しい環境の中で、独自の技術を磨きながら新たな勝負ツールを得て生き残りをかけておられる方々の、絶対に負けない、あきらめないという意気込みが、新たな技術の誕生へと繋がったことは想像に難くありません。このように、推進技術の進化の根源には、地盤条件や受注環境の激しい変化に対しても、推進工法の特長である「取り扱いの簡便さ、対応性、再利用」という最も基本となる長所を生かし、なおかつ顧客の要請に的確に対応した推進技術者の努力があると言うことを忘れてはなりません。
推進技術は、当初の平穏な地盤の人力掘削から軟弱地盤や頑強地盤を対象とした密閉型の掘進機へと進化し、さらに遠隔操作による自動化へと進みました。今日では、新規建設が下降を続ける下水道以外の分野に適用性を拡大し、これまでのような二次元平面だけでなく、三次元空間をも掘進機が移動して地下構造物を創造し、人々に快適・安心な生活空間を提供できる工法として注目されるようになりました。
本号の特集テーマ「ここまで進化した推進技術」は2010年度からこれで4年連続してお届けすることになりました。これについては、今や、わが国だけでなく、世界が期待を寄せ、去年よりも今年、今年よりも来年と、時代とともに進化し続けている推進技術をより多くの方々に知って頂くとともに、推進工法にはさらなる新世界での活躍を期待したいとの思いがあります。本号においても、大中口径管推進工法、小口径管推進工法、鋼製管推進工法、改築推進工法、超大口径管推進工法、立坑、高難度な地盤を対象とした推進工法、推進管、測量、滑材・添加材・裏込め材など、現代の推進工法に欠かせない最先端の技術を紹介しております。本特集号が、わが国の新しい国造りに携わる技術者の方々の一助になることを期待したいと思います。
(編集担当:川相 章)
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特集/推進技術「きほんのき」
最近の推進工法の現場における施工管理はいろいろ高度機器を導入して、機械的な数値管理が多くなっています。それは推進工法の技術の高度化とその裏面である施工の困難さによるものですが、その効果が十分に発揮されてトラブルが防止できている場面は勿論多くありますが、ともすれば計測・制御機器を必要以上に装備したがために管理対象や管理項目が多くなってかえって混乱していることもあるようです。このことの原因の一つには入札段階での評価点を上げるために、計測・制御機器を必要以上に提案することなどがあるようですが、推進技術の基本が担当技術者に理解されていなければ、まさしく「宝の持ち腐れ」であり、かえってトラブルの芽を多くしてしまっているようにも思われます。
このことは推進技術の省力化・自動化への方向性を否定するものではありませんが、推進技術は土や水を対象としているため、経験工学的な側面が多くあることもまた事実です。それらを融合させてトラブルのない施工を実現するためには、まず基本となる知識を十分に理解したうえで、現場で起こっている現象を数値的・総合的に把握して検討する必要があります。
古くは刃口推進主流時代には切羽の状況を自分の目で見て判断し、精度管理はトランシット・レベルなど無くても下げ振りと水平器および目地開き量の実測で行ない、方向制御は刃口と先頭管の隙間にキャンバーを挿入したり切羽の掘削制御(掘り方)や木材の突っ張り棒を地山と刃口の間に設置(長太郎)して強制的に方向を変えたりして施工したものです。いまそのような施工をすれば周りから奇異の目で見られるか、管理不足として施工中止を言い渡されるかもしれません。しかしこの意味するものは、切羽の保持を常に自分で監視・把握しなければならない事や、方向制御はまず先導体の方向をしっかり制御したうえで後続の管列の動きを確認しなければならない事や、推進の精度測量は技術者が自分の目でチェックしなければならない事など、現在の高度化した推進施工でも守らなければならないポイントを含んでいます。
推進工法における基本にはいろいろな項目があり、各工法別に切羽バランスの原理などは異なっています。今月号の特集は“推進技術「きほんのき」”と銘打って推進工法の基本に立ち返って、各工法別や管理対象別に基本的な原理や遵守事項をそれぞれの専門家に論じていただきます。特に現場施工における基本的遵守事項や、トラブルの芽をいち早く察知するためのチェック項目などを論じて今後の施工に役立てていただきたいと思います。
(編集担当:中野正明)
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特集/ケーシング立坑を進化させる
推鋼製ケーシングやコンクリート製ブロックによる立坑が「設計積算要領」に採用されたのが平成10年度です。「設計積算要領」は、それ以来技術の進化に合わせて3回の改訂が行われました。
また国土交通省監修の「下水道工事積算基準(平成15年版)」において鋼製ケーシング土留めが採用され、現在に至っています。
最新の「設計積算要領」2011年度版では、名称を小型立坑からケーシング(小型)立坑に変更するとともに、鋼製ケーシングを揺動圧入と回転圧入に分類しました。これによって、現在行われている基本的な方式はほぼすべて網羅されたといえます。
このように標準化が進められてきたケーシング(小型)立坑ですが、次のような課題も提起されています。
?立坑の小型化により、従来の標準管から短尺管(ヒューム管では半切管、塩ビ管では0.8mや1m管)に主流が移っているが、管路として望ましい方向か?
?推進用立坑として必要十分な機能を発揮できる最小径とは?
?狭隘な空間での作業性や安全性はどのように確保するのか?
?適用範囲をさらに広げることはできないか?
?鋼製ケーシングは存置(一部は、切断撤去)されるが、回収して転用できないか?
?鋼製ケーシングの厚さは適正か?
?底盤コンクリートの安定や立坑の浮上・沈下の検討方法は適正か?
?積算における歩掛や作業時間は適正か?
本特集では、ユーザー(設計者)の立場からケーシング(小型)立坑に求めるものを改めてご指摘いただき、サプライヤーである工法協会がそれらに対して、これまでどのように考え、取り組み、今後どのように解決し、進化させようとしているのかを明らかにします。
そのためにケーシング(小型)立坑関連の工法協会担当者のうち、小口径管推進工法にも深い関係のある方々の座談会を行いました。
また解説では、推進技術協会加盟の各工法協会から、これまでの具体的な取組みについて説明していただきました。
本特集が、推進工法に関わる皆様の参考になれば幸いです。
(編集担当:青木健一)
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特集/推進工事技士 頼もしいパートナー
推進工事技士の有資格者は地域(県)により偏りがありますが、全国で約11,000名の方々が活躍しています。
しかし、その活躍ぶり・必要性は広く認識されているとは言い難い状況ではないでしょうか。
施工業者としては推進工事技士の資格(技術)があったからこそ、このような難しい推進工事に、あるいは施工中に発生したトラブルに対応できたということを一層PRすることが必要ではないでしょうか。
一方、地方公共団体においては推進工事技士の技術の高さに対する理解不足があると思われます。工事が設計書どおりに進めば問題はないが、このような場合は数少なく特に都市土木においてはトラブルの発生が頻繁であり、対応するには高い技術力に裏打ちされた即座の判断が要求されます。その場合地方公共団体の職員は、相談相手として現場を熟知した現場責任者(推進工事技士)を良きパートナーであることと認識してもらう必要があるのではないかと思います。
長距離、曲線推進をはじめ、元請け業者の現場責任者は、工事をコーディネイトする観点からも推進工事技士の有資格者とすることを期待します。
(編集担当:石北正道)
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特集/小土被りと近接施工
今月の特集テーマは“進化しつづける推進工法技術「小土被り・近接施工に挑む」”です。
都市インフラの整備には、社会的な影響を回避するため、推進工法を含む非開削工法に対しての需要が高まってきています。
しかし、地形的な制約や環境条件、構造物や埋設物との取り合いなどから、推進工法にとっては過酷とも思える施工条件がしばしば要求されます。小土被りや既設管路施設等との近接施工がこれにあたります。
現在、(公社)日本下水道協会並びに(公社)日本推進技術協会の指針等では、小土被りの定義を1.5D(D:掘削外径)以下と規定しています。また、既設管路との離隔距離は施設管理者によりその取り扱いが異なりますが、場合によってはFEM解析での変位予測が求められ、協議に時間を要することがあります。
開放型、特に手掘式が多用されていた頃の推進工事は、1.5D以下の小土被りでは、薬液注入等の補助工法によって地盤の安定化を図り実施されていました。
しかし、周辺技術を含む様々な推進工法技術が進化した現在、補助工法を用いずに土被り1.0D以下や推進管の呼び径程度の離隔施工も最近では多く報告されています。
これは、掘削方式が手掘から機械式に、また、掘進機のヘッドが密閉型に移行したことも大きな要因ではありますが、多くの施工実績から得られた、チャンバ内の土圧管理や方向制御(掘進機の挙動)などの知見や貴重なノウハウに加え、滑材や計測技術の進歩などが相まって小土被りや近接施工の限界に挑戦した結果と言えます。
これらの小土被りや近接施工技術は、画一したものはなく、それぞれの現場条件に即応した創意工夫性をもって臨んでいます。
しかしながら、小土被りや近接施工事例は、必ずしも全てがトラブルもなく完工したわけではなく、埋設物管理者への配慮から問題を提起しないままに埋もれているケースもあると思われます。
本特集では、推進工法における小土被りや近接施工の事例を掘り起こし、選定するに至った経緯や検討結果と併せて、施工事例に基づき、現場条件に配慮した事項と今後の課題点などを紹介して頂き、類例の参考とするために企画しました。
今後、益々省エネ・省力化が求められるなか、推進工法が最も社会生活に及ぼす影響の少ない工法として需要に応えていくためには、小土被りや近接施工技術は、克服しなければならないテーマと考えられます。
本特集が読者にとって、計画・設計と施工の一助となれば幸いです。
(編集担当:阿部勝男)
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特集/大土被りと高水圧下の施工
今月の特集テーマは“進化しつづける推進工法技術「大土被りと高水圧下の施工」”です。
本特集は、市街地での地下利用の高度化が進む現在、次号3月号の特集「小土被り」に対比した形で企画しました。
既に輻輳する先行埋設物との取り合いなどから、推進工法にとっては過酷とも思える大土被りの施工がしばしば要求されます。
しかしながら、推進工法では小土被りが(公社)日本下水道協会並びに(公社)日本推進技術協会等の指針において1.5D(Dは掘削外径)以下と規定されていますが、大土被りでは明確な定義化はされていません。
推進工法での水平方向についての計測管理は、立坑の長辺方向(掘進方向)に設定した基線(ベースライン)によって行い、この僅か数mの基線が精度を左右します。
特に、管内の有人作業が制限されている小口径管推進工法では、基線以外の水平位置の確認方法、例えばチェックボーリングによる精査が困難であり、また、電磁波の届かない大土被り施工では精度管理に多くの時間を要しています。
また、管材を視点におくと、一般に用いられているJSWAS A-2、A-6の標準的な鉄筋コンクリート推進管(大中口径管:JA管、小口径管:SJS管)の適応水圧は0.1Mp(10mの水頭)です。したがって、10mを超える水圧下での施工では、より高い止水性を要求されることとなりますが、(公社)日本推進技術協会での規格管(大中口径管:JB管、小口径管:SJB管)であっても、0.2Mpが限度となっています。
しかし、周辺技術を含む様々な推進工法技術が進化し続ける現在、たゆまないチャレンジした実績から得られた計測技術等のノウハウに加え、即応した創意工夫性により、大土被り施工も安全かつ確実な技術として克服し、多くの事例が報告されています。
本特集では、大土被りの推進工法を施工事例に基づき、現場条件に配慮した事項と考察などを紹介しています。
今後も、社会生活に及ぼす影響の少ない工法として、また、省力化が益々求められる中、非開削技術のニーズがその地位を確かなものとし、大土被り推進工法技術に対する期待が高まってくるものと推察されます。
読者には、計画・設計と施工の一助となれば幸いです。
(編集担当:阿曽伸悦)
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特集/目指せ!
推進技術の次なるブレイクスルー
「月刊推進技術」ご愛読の皆様、新年明けましておめでとうございます。
2013年(平成25年・巳年)のスタートです。今年が、皆様が携わる推進業界にとって、どんな輝く年になるか期待するとともに、「月刊推進技術」としても、皆様を元気付ける価値高い技術情報を逐次お送りするつもりです。どうかこの一年、よろしくお付き合いをお願いいたします。
さて、「月刊推進技術」では、例年、新春号は、読者の皆様が一年間の業務を通じ、明るく力強い展望を抱けるような特集テーマを組んできました。今年は、「目指せ! 推進技術の次なるブレイクスルー」としました。
我が国初の推進工事は、1948年(昭和23年)、兵庫県尼崎市内で旧国鉄尼崎臨港線の軌道下を横断して、ガス管のさや管として口径600mmの鋳鉄管を6m敷設したものでした。もちろん、当時の手法は鋳鉄管の先端に簡単な刃口を装着し、切羽は開放され人力で地山を掘削し、その空洞に管を手前から押し込んだもの。使用されたジャッキも手漕ぎのシップジャッキ。正に時代物です。それからわずか60余年、我が国の推進施工技術は世界に冠たる最高位に昇りつめ、東南アジアなど開発途上各国から賞賛と羨望を寄せられるまでになっています。
ここまでの推進技術の進化、発展の過程には、何があったのでしょうか。そこには、大きな技術課題への果敢な挑戦と突破、斬新な発想、巧みな工夫と智恵の発現など、先人達がなした幾多の成果の積み重ねが見えます。今日、我々が手にする推進技術の現状からすれば、あって当たり前、普遍的な汎用技術とされるものさえ、当時としては大いなる“技術的ブレイクスルー”だったに違いありません。そもそも、管路を敷設するに当たり、地上から掘削せず、地中に管を押し込んでいこうとする着眼、発想こそ、荒唐無稽な“ブレイクスルー”だったはずです。
例えば、人力掘削では埒があかないので、推進管の前に泥水式シールドマシンを装着した。口径800mm未満の管内で人が作業できないのなら、地上から遠隔操作するしかない。真直ぐ推進できるよう方向制御できるなら、曲線だってできるはず。推進管に架かる抵抗を分割できるなら、弱い塩ビ管だって推進できるはず。口径3,000mmを超える推進管が路上搬送できないなら、二つに割って運べばよい、などなど。今から見れば、極々当然な技術とされた密閉型機械掘進、小口径管推進、低耐荷力、曲線推進、超大口径などなどです。
さて、今日、我が国の推進関連技術の品揃えはどうか。正直、世界の最高水準と自負できるものの、10年、20年後の未来社会から見れば、不満、未熟とされる分野もあるかも知れない。今回は、そんな視点から、推進工事に関わる計画設計面、施工管理面、管材、測量など関連技術面を、新年会でのほろ酔い気分から大胆、果敢に、かつ無責任に俯瞰、総点検して、次なる社会が求める“推進技術のブレイクスルーの芽”を探り出す、夢語り特集です。先人達が描いてきた夢の多くは、今、私たちの手元にあります。次なる夢の実現は次なる世代の責務です。
推進業界の暗く重たい閉塞感を打ち破る武器は、“技術のブレイクスルー”しかありません。そのヒント、発想の素をこの新春号から読み取って頂ければ幸いです。
今年は巳年。開発目標を定めたら、それに向け執念深く地道に追い求めたいものです。
(編集担当:石川和秀)
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