< 2020年8月号 >
特集/推進工事の施工管理における工程・品質・安全 |
総論:国土交通省、(公社)日本推進技術協会
解説:アースナビ推進工法協会、機動建設工業(株)、(株)協和エクシオ、サン・シールド(株)、地建興業(株)、(株)福田組、りんかい日産建設(株) ほか
連載:巻頭言/今月の推論/随筆/ゆうぞうさんの山紀行/会報/その他
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特集/次なる発想の源となる新技術
推進工法はその時代の要望を叶えるため努力を重ね飛躍的に進歩してきました。その技術水準は、多様な土質条件を克服し、さらに長距離・曲線施工を可能にしました。当初は下水道中心であったものが、その工法の手軽さから電力・水道・ガス等のインフラ整備へと用途を拡大し、今日では地下埋設物が輻輳した都市での地下工法としての地位を築いています。
現在の推進工法は、様々な技術で構成されています。大きくは掘削するための技術、推進管に関する技術、および環境対策や安全等に関する技術に分類されます。掘削技術も掘削機そのものを含めた様々な土質への対応や切羽安定の技術、土砂取り込みや排土の技術、滑材やその注入技術および測量技術があります。また、初期掘進時等に施工される地盤改良技術もなくてはならないものです。今日ではそれぞれを制御するためのシステムも大きな位置を占めています。推進管技術としては、様々な材質や適応する圧力への対応、主として施工条件で決まる様々な管の長さや、超大口径管の分割技術があります。管の技術では継手技術も非常に重要なものです。その他、技術としては地球環境や施行時の周辺地域への影響低減技術、施工時の安全技術、最近では障害物への対応技術等があります。
本号では「次なる発想の源となる新技術」というテーマで、実績はまだ少ないが今後世の中に広めたい技術、特殊な分野等で再認識してもらいたい技術、他分野への応用を広げたい技術、通常の号ではなかなか紹介しにくい要素技術を紹介したいと思います。それらの技術が新しい刺激を生み、次なる発想の源となり推進工法全体の発展に繋がることを期待します。これら、他社の技術動向や新しい発想はお互いの切磋琢磨の原動力としてさらなる発展のきっかけにもなると思います。
一方、新しい技術が世の中に認められ「標準技術」となるためにはある道筋があると考えます。それは技術そのものが認知され、在来技術を超えるためのもので、その過程で様々な壁が存在します。それらは、技術的課題や競合技術への対応がありますが、市場に見合った価格や必要とするニーズも非常に重要な要素になります。新しい技術を納得させるにはやはり「実績」が必要です。そして最後に前例主義を打ち破れてこそ本物になります。これらを経験して世に出てきた技術事例を紹介し今後の技術展開の参考にしてもらえれば幸いと考えます。
(編集担当:稲葉富男)
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特集/ケーシング立坑 実用化30年
今年は、1984年にケーシング立坑が実用化されてから30周年です。この間、多種多様な工法が登場し、技術を向上させコストダウンに取り組んだことにより、ケーシング立坑は小口径管推進用立坑の主流になりました。
しかし、近年の下水道普及率向上による管敷設工事の減少に伴い、ケーシング立坑の需要も減少傾向です。需要の減少は業者間の過当競争を生み、それが安全を軽視した施工やダンピングを生んでいます。
さらに、その実態調査から策定された設計歩掛や日進量により、設計価格も低下するという負のスパイラルに落ち込んでいます。
このような実情を打破するには、各工法が独自性を追求しそれを発信して設計に反映するとともに、高付加価値化、新たな用途の開発、合理的なコストダウンなどに取り組むことが必要です。
また、現状の各工法一律の設計積算基準を工法の独自性を反映したものに変えることも必要だと思います。
本特集では、各工法に関して、開発から現在までの軌跡と到達点について解説し、今後のあるべき姿について検討します。
(編集担当:青木健一)
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特集/安全・良質な推進工事を堅持する
昭和23年に国内で初めて推進工法が採用されてから、設計ニーズの多様化および各メーカ等での技術開発により、画期的な工法や新しい材料(推進管、滑材等)等が導入され、推進技術は、目覚ましい発展を遂げています。推進管の先端に刃口を装備して人力により掘削、ズリ出しを行っていた開放型推進工法から、昭和40年代には密閉型推進工法、昭和50年代には小口径管推進工法が、さらには昭和60年代になると小口径管推進工法で曲線推進が導入されました。さらに平成に入ると、推進工法の長距離化および増径化に拍車がかかり、近年では呼び径4000の超大口径管推進や約1.5kmの超長距離推進が施工されています。
優れた高度な技術は、適切な施工管理の下でその優位性が発揮されるもので、一旦、施工トラブルが発生すると、道路通行上の支障となり、社会生活へ悪影響を及ぼすことになります。そのため安全で高品質な推進工事を施工するためには、各々の要素技術を組み合わせた総合的な施工管理の遂行が重要なポイントとなります。
特に小口径管推進工法は、推進管内での作業が禁止されていることから、掘進作業および掘進機の方向制御等を地上で遠隔操作しなければならず、さらに掘進機の位置を直接、目視確認することができないことから高度な技術と長年の知識・経験に基づいた施工管理ノウハウが求められます。このような背景から、推進工法において確実な施工を行うためには、施工面を考慮した設計検討も必要ですが、現場における推進技術者および現場管理技術者の育成が課題となっています。
しかし、近年では長引く建設投資額の抑制により、建設会社および建設に係わる作業員の数が大幅に減少し、施工管理技術力の低下、空洞化等が進み、建設業界を取り巻く環境が大きく変化しています。政府においても新しい成長戦略のなかで外国人や女性の活用拡大等の対応を検討しており、若年労働者の確保、育成が建設業界全体の課題となっており、知識、技術、技能の継承が非常に困難な現状となっています。
本号では、安全で高品質な推進工事の施工管理を目指して、発注者側、設計部門のコンサルタントおよび施工会社の各部門における現状の課題と今後の在り方について、次世代への技術継承の観点から解説するとともに、各工法協会等における技術者育成および施工管理等の現状と展望についても解説します。今回の特集が現場での施工管理技術者の方々のみでなく、設計業務に携わる皆様の参考として頂ければ幸いです。
(編集担当:前田公洋)
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特集/障害物を坑内から撤去
─難工事を克服─
我が国では、明治以降、近代的な都市が形成され、地下には都市機能を維持する鉄道、道路、上下水道、電気、ガス、通信などのトンネルやパイプラインが数多く建設されてきました。特に、昭和30年代以降のめざましい工業化の進展により、建築物やインフラ施設がさらに高密度に構築され都市機能を支えています。
この様に地下には多くの人工の構造物が高密度に輻輳して存在することから、地下構造物を造るスペースが限られ、新たなトンネルやパイプラインを構築することが困難になりつつあります。
そのため、推進工法のルート選定においては、既存構造物の施工時の土留め矢板、アースアンカー、古い構造物の基礎杭、地盤改良等推進時の障害となる物体の有無およびその位置を正確に把握する必要があります。しかし、その図面が残っていない場合や、図面が残っていても図面以上に仮設物等が深く存在する場合、あるいは本体構造物が撤去されても支持杭が撤去されていない場合があるなど、正確に把握できないことがあります。
もし通常の掘進装置で障害物に遭遇すれば、掘進機のビットの摩耗・脱落による掘進不能、さらには撤去作業による長期停止により縁切り推進力が過大になる等大きなトラブルを引き起こします。このことから、ルートの選定では十分な事前調査を行い、障害物がある場合、撤去が地上から事前にできるかどうか、あるいは障害物を避けたルートを選択するかを施工条件から検討します。しかし、障害物を避けることができない場合、あるいは障害物の詳細調査が困難で遭遇する可能性がある場合等、坑内から撤去するしか方法が無い場合はその方法を十分に検討し対策を講じておく必要があります。
この様なことを背景に、近年、坑内からの障害物探査技術や障害物撤去技術の開発が進められ、掘進機に切削装置等を装備して坑内から撤去するなど様々な工法が開発され、現場へ適用されています。
今月号では、「障害物を坑内から撤去?難工事を克服?」と題し、坑内から障害物の撤去を可能とする工法の開発の現状と、障害物撤去を坑内から行った事例に焦点をあて、これらの技術の課題と将来の展望について考えます。
(編集担当:西口公二)
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特集/世界が認めた最高水準の推進技術
本号の特集は、「世界が認めた最高水準の推進技術」(祝 日本推進技術NO-DIG AWARD連続受賞−受賞者からの提言)です。我が国における地下インフラに利用されてきた推進工法は、世界から優れた非開削技術との評価を受け、次々と海外のインフラ整備に適用されてきました。近年においては、下水道管路敷設の需要が高まっている発展途上国での採用、問い合わせが増加しています。我が国が発展させた推進技術が、世界から評価を受けている証の一つとして、ISTT国際非開削技術協会(本部:ロンドン)が年間非開削技術賞として選出しているNO-DIG AWARDにおける多数の受賞があります。1980年代後半からの国内下水道管路工事の増加とともに、我が国の推進技術は発展しました。そして、1986年から始まったNO-DIG AWARDにおいて、1990年代は3年連続も含む5回の受賞を達成し、日本から発信される新しい推進工法技術は海外から高い評価を受けていました。残念ながら2000年代は受賞が少なかったですが、2010年代になって、新たな課題克服による需要からの斬新な技術開発がなされ、2012年、2013年と連続受賞を達成しています。そこで本特集では、日本推進技術のNO-DIG AWARD連続受賞を祝し、NO-DIG AWARD受賞者からの提言として、受賞した技術開発の目的や開発の苦労話、その技術の継承は現在の技術にどのように活きているのか、さらに今後の展開などを紹介していただきます。そして、今まさに技術開発を進めている企業・団体が、次なるNO-DIG AWARDを目指すきっかけとなれば幸悦です。
(編集担当:佐藤 徹)
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特集/日本の推進技術・最前線
推進工法は、1896年アメリカ北太平洋鉄道軌道の排水管の横断に用いられたのが初めてとされています。わが国では、昭和23年、国鉄尼崎線軌道下にガス管のさや管として内径600mmの鋳鉄管を推進工法により敷設したのが最初の推進工事です。
わが国は、昭和30年代に入ると、急速な工業化により都市部の人口が急速に増加し、東京オリンピックや東海道新幹線など国家的な社会資本整備が急速に進められるとともに、交通施設、エネルギー供給施設、上下水道施設などライフラインの整備が進められました。この様な都市部の急速な工業化と人口増加によって、工場排水、生活排水が増大し、公共水域の汚濁による環境破壊が進んだことから、昭和40年代に下水道整備が広域的に急速に進められました。この下水道事業の推進を背景に、推進工法は、道路交通や地上、地下の構造物等にできるだけ影響を与えない工法として多く採用され、急速な技術の進歩を遂げました。
推進工法の歴史は、昭和32年、それまでの手動式ジャッキに代わる動力式ジャッキの開発、昭和35年、ボックスカルバートの推進に成功、昭和40年、カーブ推進の施工および泥水加圧式セミシールドの施工、昭和51年、泥土加圧式推進工法の施工、昭和52年、小口径管推進工法(圧入式)の開発、昭和56年、泥濃式推進工法の施工、平成17年、超大口径管推進工法の施工というように大きく進歩してきましたが、特に昭和50年代において小口径管内の作業が禁止されたことから、小口径管推進の技術開発が急速に進展しました。その後も、施工機械、施工材料、通信・制御および測量技術の進歩とたゆまぬ工法の改良・開発により、長距離、急曲線、急速施工等の施工能力の向上や適用範囲の拡大に向けた技術の高度化が進められ、現在では、上下水道、電力、ガス、通信など様々なパイプラインの構築に推進工法が使われています。
本号では、世界の最高水準を行くわが国の推進工法に関する技術情報について、できる限り最新のものを読者の皆さんに紹介できるよう務めました。本特集が読者の方々の知識を深めるとともに、推進工法が社会資本整備の拡充のためにより一層活用される一助になれば幸いです。
(編集担当:西口公二)
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特集/知っておくと得する
(知らないとしくじる)
推進工事のポイント〈施工管理編〉
今月号は5月号の続編となります。先月号でも触れましたが、発注者としての自治体や現場で工事に携わる施工者から、推進方法について知識の不足した技術者が多くなっているのではないか、諸先輩が汗水を流して研究・開発した「世界に冠たる推進技術」が継承されていないのではないか等、危惧する意見が(公社)日本推進技術協会に届きますし、編集委員からの発言もありました。
そこで、誰でも読みやすく実践的な推進工法に関する冊子を特集号として、Q&A形式で作成しようという機運が高まり、編集委員および(公社)日本推進技術協会の技術委員の協力もいただきながら作成することにいたしました。
推進工法を採用する場合には、先月号に記載のように、詳細な事前調査、決め細やかな土質調査、適切な管材の選定、既設構造物の回避・起終点の位置から合理的な線形の決定、掘削土の処理・処分方法の検討を行います。
今月号は引き続き推進工事に際して、資材の搬出入・推進設備の設置等に必要な「立坑の選定」、推進工法の適用範囲・工法分類・適用土質を記述した「推進工法の選定(大中口径・小口径)」、耐用年数に達した管きょを更新などの場合に有効な「取付管・改築推進工法の留意点」について記述することにいたしました。
推進工法の採用に際しては、これらの解説を充分に理解していただきたいと思います。推進工法に関しては幅広い専門知識が要求され、一つでも欠けていると期待どおりの管きょの築造は困難となります。知識不足から工事の発注を断念すると社会資本整備の停滞、適切な更新事業の執行に支障を来たすことになりかねません。
また、(公社)日本推進技術協会の技術者資格制度である「推進工事技士」は推進に関する高度な専門的知識を有しています。計画・設計時は相談相手として、また施工に際しては専任で現場に常駐してもらうことにより適切な監督業務の遂行および品質の確保のためにも有効な方法ではないかと考えます。
(編集担当:石北正道)
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特集/知っておくと得する
(知らないとしくじる)
推進工事のポイント〈計画編〉
今回の特集は2編構成とし、5月号には土質調査、推進管の選定、掘削土の処理・処分、線形計画と制約などの「計画論」を中心に、6月号には工法の選定、立坑築造の留意点、取付管推進工法、改築更新工法など「施工管理の留意点」を記述することといたしました。
特集の趣旨といたしましては、地方公共団体、施工者の皆様から日々日本推進技術協会に寄せられる「推進工法の技術の伝承」に関する悩み、専門書に載っていない「ちょっと困った時の手引書」の要望を踏まえ今回企画いたしました。
発注者側の自治体においては、近年団塊の世代・ベテラン職員が大量に退職され、それまで蓄積された技術が必ずしも若い職員に継承されているとは言い難い状況です。また若い職員の置かれている境遇としては、近年公共工事費・工事件数の減少により技術を磨く機会が不足しています。そのため設計図書において選定された工法が土質・施工条件と整合していなかったり、計上すべき項目が見落とされたりしているケースが見受けられます。
施工者からは、現場説明時に内容確認に関する多くの質問が寄せられています(設計書と現場が合わない)。着手しようとしても事前の調査が不十分のため現場で待機を余儀なくされる工事があり苦慮しているなどです。
推進工法のラインナップも拡大・充実し、必要管径、土質、線形、埋設深さに対応できる素晴らしい管きょ築造方法になりました。しかし技術者の中には推進工法は難しいのではないか、基礎的なところが分からない等のご意見も伺っております。
今回の特集(5月号、6月号)は従来の記述方式からQ&A方式にしてみました。今回の特集号が今後の推進工事の設計・施工業務に携わる皆様の「ちょっと困った時の手引書」として活用されれば幸いです。
(編集担当:石北正道)
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特集/施工と管材のコラボで難工事を克服
〜高規格・高性能推進管の実態〜
推進工法は仕上がり構造物である推進管を発進立坑から押して、地中を移動させて構造物を完成させる技術です。推進管は施工中に周辺の土圧や水圧を受け、推進ジャッキからの推力を受けながら移動します。当然このような推進管の受ける荷重は時々刻々変化します。継ぎ手部の状況も変化します。開削工法に使用する埋設管と比較してあるいはシールド工法に使用するセグメントと比較して、推進管は複雑な外力を受けつつ継ぎ手部の状況も変化します。そのような特殊な施工環境であるため、推進管には特に高品質な性能が要求されます。
推進工事で管の破損などのトラブルが発生した場合、その原因は施工方法にあるのかあるいは推進管の品質に問題があるのかが議論されます。特に長距離、急曲線、大深度などの技術困難な工事においてそのような事が発生すると、重大なトラブルになるため、双方の責任追及に終始してしまってあまりよい結果になって無いような気がします。つまり、施工側は推力が許容耐荷重以内で推進精度は許容誤差以内ならば問題は管材にあると主張し、管材側は工場製造時の品質は基準に合格しているのだから問題は施工方法にあると主張します。それぞれ正しいとは思いますが、そのような主張のやりとりでは厳しい施工条件での設計、施工は保守的に慎重にならざるを得ません。しかし、今推進技術に要求されるのは、そういう厳しい施工条件の克服であり、施工技術と管材技術の一体化によるさらなる推進技術の前進です。特徴的な事例としては中押し管の性能があります。厳しい施工条件の長距離推進工事などにおいては、中押し管の配置と使用は必須ですが、現実は繰り返し使用や曲線部での使用には問題があります。この問題を標準施工手順や管材の規格基準のみで論じては解決しないのではないでしょうか。双方があるべき姿を念頭に改善策を模索する必要があると思います。また、下水道管路に使用する以外のいわゆるさや管としての推進管、特に直線の管路であれば、現状の規格をすべて満足する品質が必要なのかどうか疑問があります。軸方向耐荷力などはより高い品質が要求されますが、内面の平滑性、曲げ性能などは現実に即した検討でコストカットすべきかもしれません。
施工者側からの要求としては複雑な施工条件を考慮した十分な安全率の確保であり、管材側からの希望としては性能内の施工環境確保だと思います。特に厳しい施工条件では十分な安全率を確保した高品質、高性能推進管が必要であり、使用している推進管の品質、性能を十分理解した上での施工管理が要求されます。つまり現実に即した施工技術と管材料技術の一体化、両者のコミュニケーションが必要です。
今月号では「高品質推進管と高度施工技術が一体で難工事を克服」と題して、推進工法の根幹である施工技術と管材料の双方からの問題点、要求事項などを抽出して、今後のさらなる推進技術の発展を図りたいと思います。
(編集担当:中野正明、阿曽伸悦)
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特集/巨石地盤における難工事克服の課題
推進工事において難工事となる地盤には岩盤・超軟弱粘性土・滞水砂層・多種類の互層地盤などいろいろありますが、最近の事例でトラブルの件数の最も多いのは巨石地盤だと思われます。以前は巨石(玉石)地盤における推進工は推力の大きさ、精度確保の困難さなどから極端な長距離施工や急曲線施工はあまりなかったように記憶しています。しかし、近年では都市部における下水道工事以外での適用場面などで、特に河川横断や山岳丘陵地でのパイプライン敷設工事では長距離施工が要望されるようになってきました。この課題を克服するためには改めて巨石地盤における推進工法の問題点を抽出して、その困難さを認識するとともに、推進施工技術のみならず管材料、掘進機、注入材料などいろいろな角度から検討する必要があります。
課題の検討に当たってはまず土質(巨石)の状況を把握しなければなりませんが、巨石地盤の場合特に知りたいのは、地盤の透水係数、最大礫径、礫率、礫強度、石英含有量などです。これらを元に検討すべき事柄としては?選定すべき推進工法における切羽保持の可否?推進力の算定に基づく推進管の選定?テールボイド保持のための滑材、添加材の選定と注入方法の検討?礫(巨石)の破砕方法とビット、クラッシャの摩耗検討などです。特に長距離・急曲線・大土被り(大深度)などの普通地盤でも技術困難な路線設定であれば、特に入念な事前検討と対応策の実施が必要です。
このような慎重な事前検討を怠って施工現場で大変な苦労をしている場面もあるようですが、推進技術者たる者としてはこのような課題を克服して巨石地盤における施工技術を確立すべきだと考えますので、今月号ではそのような巨石地盤における推進工法の問題点とそれに対する技術開発の現状と今後の展望、あるいは現状の設計基準を超える施工に対する提言などを特集します。現実の施工現場での苦労や管材料、掘進機、注入材料などの開発の現状が明らかにして、今後の展望を考えてみたいと思います。
(編集担当:中野正明)
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特集/長距離推進のゆくえ
〜長距離推進を可能とした
各分野における技術革新〜
推進工事65年の歴史のなかで、ここ十数年の技術革新には隔世の感があります。
とりわけ推進工事の(超)長距離化の進展には、驚きをもって受け止めている読者も多いことと思います。
長距離推進施工は、本誌の事例報告等で度々紹介され、また、2010年(Vol.24 No.10)の特集「最先端技術を探せ!〜長距離推進の道のり〜」として取り上げられた古くて新しいテーマです。
かつて、非開削における長スパンの管きょ埋設工事の多くは、S字曲線や複合曲線、急曲線施工が伴い、また、推進工法では周面摩擦力抵抗による大きな推進力を必要とすることなどから、シールド工法が担ってきた経緯があります。しかし、これらの施工領域を、推進工法各分野の技術改良と開発によって課題をクリアし、大中口径管推進施工では1スパンが1,500mの施工を可能としてきています。また、小口径管においても同様に、高耐荷力方式では300m、低耐荷力方式においても100mを超える施工実績があります。
これら推進距離の飛躍的な伸びは、掘進機(先導体)や軸方向耐荷力が大きく、かつ曲線にも対応可能な多種多様な推進管の開発をはじめ、元押および中押装置、推進力低減措置としての滑材と注入方式、曲線施工への計測技術の改良や開発、さらにはこれらを包括する遠隔制御などの高度な施工技術革新の積み重ねによって可能としてきたものです。また、同時に、施工実績から得られた知見に基づき、(公社)日本推進技術協会において、曲線推進や泥水・土圧式、泥濃式等の推進力算定式の整理を行ったことが、ユーザ側における長距離推進の信頼度を増し、長距離推進施工の採用を浸透・加速したものと思われます。
反面、長距離推進施工では、地層の変化のほかに、事前調査では把握できない事項も多く介在しています。推進工法では一般に、施工途中での中断は推進力の増大を来たすために時間的な制約が伴い、かつ補助工法の採用にも選択肢が限られていることなどからリスクを背負うことになります。確かに従前との比較では、管内作業の省力化とシステム化が図られ、また、計測技術が格段に進化し、安全・確実性が確保され信頼度も高まりつつあります。しかし、これまでのところ、掘削方式によって多少の差はあるものの、大中口径管推進施工では長距離推進の如何にかかわらず、狭い管内空間での常態的な作業が伴い、完全な無人化作業に至っていません。したがって、安全性の担保と作業環境の保全が求められます。
本特集では、大中口径管および小口径管推進の長距離化に向けて、掘進機(先導体)をはじめ各分野における最新の取り組み状況と併せて、推進力の低減方法、排土や計測技術等に関する様々な工夫と配慮すべき事項、安全管理上の留意点など、幅広く言及していただいています。
今後、長距離推進を採用される自治体やコンサルタント職員にとって、これらを設計図書に反映していただくことにより、さらなる安全の確保と併せ、適正な工事費積算の一助となれば幸甚です。
(編集担当:阿部勝男)
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特集/都市基盤大改造に期待される推進工法
昨年9月、ブラジル・リオデジャネイロで開催されたIOC総会において、我が国の悲願でもあった2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市に東京が決定された。東京のみならず、日本全体がこの決定に歓喜した余韻が未だ残る。夏季オリンピックの開催は、1964年(昭和39年)10月以来、56年ぶり2回目となるが、当然、過半の国民は先のオリンピックを体験しておらず、未知のオリンピック開催に期待が高まるのは必然だ。
政府としても、先のオリンピック開催では、戦後復興を成し遂げた「近代国家日本」の姿を世界に鼓舞することに主眼をとしたが、今回の開催に向け、東京を始めとした全国主要都市について、次世代都市機能への大転換を図るべく、都市基盤の再構築を目指す意向が示された。
現在の東京都心部の高速道路(首都高速)は、先のオリンピック開催を目標に、江戸風情を残す掘割を埋め立て、あるいはそこにピアを立て、由緒ある「日本橋」を跨ぎ、ビルの間を縫うような線形で急拵えされたものだ。当時はこれを「佳し」とし、その機能も賞賛されたかも知れぬが、現状では、高架道路の線形と容量から昼間の渋滞が常態化し、都市景観上の課題もさることながら、高架構造のそのものの物理的劣化、老朽化の懸念が増大している。都市交通の地下化が視野に入る。
また、都心部の下水道整備の多くは、先のオリンピック開催に向け取組んだ「大突貫工事」で構築されたもので、供用以降、優に50年を経過しており、路上交通や周辺工事から受ける損傷、あるいは下水から発生する硫化水素ガスによる管内面腐食による老朽化の懸念が増すとともに、近年、頻発する「ゲリラ豪雨」からの浸水防除も対応が急がれる課題だ。これは下水道に限らず、次世代都市機能の実現に向け、水道、ガス、電力、通信など地下パイプラインにより機能を果たす地下基盤全てについて、老朽化への対応や機能拡大が急がれる。
都市の地下基盤大改造の際、我が国推進業界がここまで培った世界最高水準の推進技術、例えば長距離・曲線推進、改築推進、超大口径管推進、さらには大規模パイプルーフ工などが有力手法となることが必然だ。
本特集は、これらの視点からの展望と期待について、地方自治体、設計コンサルタント、推進施工企業、さらには推進技術関連企業で、2020年時点では、その最前線で重大な責任を負うであろう若手技術者にお集まり頂き、新春にふさわしく明るくかつ力強く語って頂く。
(編集担当:石川和秀)
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