< 2020年8月号 >
特集/推進工事の施工管理における工程・品質・安全 |
総論:国土交通省、(公社)日本推進技術協会
解説:アースナビ推進工法協会、機動建設工業(株)、(株)協和エクシオ、サン・シールド(株)、地建興業(株)、(株)福田組、りんかい日産建設(株) ほか
連載:巻頭言/今月の推論/随筆/ゆうぞうさんの山紀行/会報/その他
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2016年12月号 
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特集/地域社会の発展に貢献する推進業者
推進工法は、都市部における管埋設工法の中で有効な方法として多用され、現在,我が国における下水道普及率は既に約77%を超えている。しかし、都道府県別の下水道普及率では、いまだ50%に満たない地域が多数ある状況である。また、近年発生した各地域での大きな災害時の影響で、一部の地域での下水道普及率が下がっていると推定される地域がある。よって、今後も我が国は持続的な社会形成のための下水道工事の整備が求められており、推進工事もその役割を担っていくと考えられる。
一方、我が国では下水道の普及率が高まると同時に、大都市だけではなく、各地域に優良な推進業者が存在するようになっている。各都市では、地域の推進施工業者が、その土地の土質、地域の実情、特性などを理解し、推進工事を実施している。その施工の中には、課題克服のための独自の施工技術を発案、提案し、効率的、経済的な施工が行われている事例もあり、その技術は今後の推進工法発展自体にも寄与されるものであると考える。
そこで、今月号の特集は「活躍する各地域の推進業者」とし、各地域の自治体には、地域創生と持続的な社会形成に向けた、今後の推進工法の適用について記述頂き、さらに各地域で活躍している推進施工業者には、その地域の特性を踏まえた推進施工事例や独自の施工技術の紹介も交え、その活躍状況を披露して頂きたい。そして、それらの取り組みの事例の紹介が、地域の管路敷設に関して計画つくりの参考、地域発展のための議論の高まりと推進工法自体の発展につながればと考えます。
(編集担当:佐藤 徹)
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特集/低耐荷力管推進工法 〜35年目の進化〜
低耐荷力推進工法は工法の開発から含めると35年になります。「ホリゾンガー工法」が基盤になり「エンビライナー工法」が世界で始めての低耐荷力管推進工法の誕生でした。当時はまだ塩ビ管による下水道の敷設工事も道路管理者の認可が下りず、塩ビ管での推進工事はごく稀であったと記憶しております。その後コンパクトな構造の「スピーダー工法」が誕生し他多くの工法が開発され施工実績も増え、低耐荷力管推進工法も認められ下水道普及率の向上に大きく貢献できました。
塩ビ管の種類もJSWAS K-6規格では、当時はVUとVP管の2種類で継手もサスカラー、リブカラー、スパイラルと3種類がありました。VM管が追加されその後VU管が廃止となり継手もリブカラーも廃止となりました。各々材質や継ぎ手形状は土質、距離、環境、推進工法を考慮し検討させております。
推進技術の活躍の場でもある下水道事業も普及率は平成26年度では77.6%となり、下水道管路事業の発注量は、平成10年の18,214kmをピークに16年が経過し26年度では3,989kmにまで減少しています。26年度の非開削工法の採用はシールド工法などを含み前年度比20.2%ダウンの297.4kmとなっており推進工法の採用は年々減少傾向となっています。
しかし、26年度の新路線発注量を管種別にすると塩ビ管の採用は3,377.8kmと全体の85%ほどあり、その99%がφ450mm以下です。開削工法に比べ推進工法は安全性、施工性、トータル的な経済性は優位です。低耐荷力管推進工法の下水道事業での採用は今後期待できる分野であると思われます。最近は硬質土地盤、長距離、曲線施工など高難度の施工事例も増えてきており、低耐荷力管推進工法の採用の後押しとなっています。
また、新分野での展開も図られており軽量、コンパクトなどの特色がある低耐荷力管推進機を活用し「パイプルーフ工事」「タイロッド工事」「液状化対策工事」「調査工事」などの事例も増えています。
今回は低耐荷力管推進工法の特殊な施工例などを紹介し、今後の当工法の発展に繋げられれば幸いです。
(編集担当:西尾 王孝)
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2016年10月号 
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特集/推進工法進化の歴史
推進工法における技術開発はその草創期から多くの技術者の努力と発想に基づいて数多くなされてきました。そのおかげで今では胸を張って世界一の推進技術だと言い切れるまでになったと思います。しかしここ数年は一部では継続的な研究開発に基づいた進歩が見られたり画期的な改良がなされたりしているものの、多くはもうすでに従来の既往技術となった技術の延長で、小手先の改良がなされているよxうな気がします。推進技術の将来は海外展開を含めて明るいものであると確信していますが、少し気がかりなことは国内での技術の進歩が停滞気味なことです。その原因としては、国内における管路埋設の市場の縮小、次世代をになう技術者およびその可能性を秘めた若者が業界に居着いていないこと、数年前までの10年間程度続いた景気のデフレスパイラルによる企業の業績悪化など数え上げればきりがありません。しかし、景気が「少-し回復」し将来のことを考えなければならない今こそ、将来の推進関連市場が安定して確保できるように新技術の開発、改良に努めなければなりません。その一助としてこれまでの推進技術の進歩の歴史を振り返り、とりわけ時期尚早や奇想天外すぎて社会に受け入れられず消え去った技術などにスポットライトを当ててみたいと思います。
推進技術の歴史は古くは刃口推進主流時代の自動連動中押し装置や自動掘削機などに始まり、ブラインド刃口や圧気工法の導入がなされました。機械推進の時代に入ってからは長距離・曲線施工に伴う掘進機遠隔操作や遠隔監視システムおよび自動測量・自動滑材注入システムなど多くの自動化システムが実施されています。小口径推進の分野では多くの推進機が提案され自動化や砂礫などの困難土質への対応などが達成されていると言えると思いますが、その反面多くの工法(技術)が消え去った過去があります。また消え去ったと言い切るには時期尚早で失礼にあたると思われますが、いまいち伸び悩んでいる技術もたくさんあり、今後の対応に苦慮されている方も多いのではないかと思います。
今月号では「推進工法の歴史と発展(生かされた技術と消え去った技術)」と題して、草創期から現在までの間に開発されたいろいろな技術を紹介していただき、とりわけ消え去ったり伸び悩んだりしている原因や改良方法、今後の技術開発への生かし方などを考えてみたいと思います。往々にしてこのようなテーマでは執筆をためらわれるケースがあると思いますが、今月号に執筆していただいた「勇気ある技術者」に敬意を表するとともに、内容を熟読いただいて今後の発想に生かしていただくことを切に願っております。
(編集担当:中野 正明)
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特集/ゲリラ豪雨から都市を救え
近年、ゲリラ豪雨に由来する甚大な被害がマスコミ等に取り上げられる機会が多くなっているのではないでしょうか。
近年の災害としては、福岡水害(平成11年6月)時には、道路に溢れた豪雨が地下鉄に流入し、交通システムに甚大な被害をもたらすとともに死傷者も出ました。
広島市安佐北区(平成26年8月)の集中豪雨においては、大規模な土石流が発生し家屋の倒壊や多くの人命が失われました。
最近の水害である関東・東北豪雨(平成27年9月)の場合には、河川護岸の崩壊に伴う大水害が発生し、多数の家屋の崩壊・流出や大規模に田畑が水没しました。
下水道に携わる者として、記憶に留めておかなければならない災害です。
これらの災害は異常気象と言われる集中豪雨に起因するものであり下水道だけでは対応できませんが、降雨後、速やかに排水し復旧作業の迅速化や公衆衛生の保全等の観点から下水道の役割は重要です。
また近年の浸水被害の特徴としては、時間的・地域的に偏在して発生していることです。
このような豪雨においても浸水区域に隣接する幹線下水道においては、余裕がある場合が見受けられ、相互にバックアップする面的な浸水対策が効率的手法の一つだと考えられます。
国土交通省をはじめその観点に着目した施策が打ち出されています。
「ストックを活用した都市浸水対策機能向上のための基本的な考え方」(平成26年4月)が国土交通省において示されました。既存ストックを活用した浸水対策において、浸水シミュレーションの充分な活用、浸水対策の目標設定、水位等の観測情報を活用する。
「新下水道ビジョン」国土交通省・(公社)日本下水道協会(平成26年7月)が示されました。汚水の整備区域外でも、浸水リスクの高い地区の浸水対策を実施可能とする。雨量レーダー等による観測情報や施設情報や、既設施設の活用等の考え方を、整理し、指針か等を行う。内水ハザードマップを公表し減災の取り組みを強化する。
これらの施策を踏まえ今月号の特集は最近多発するゲリラ豪雨から都市を守るために推進技術がどのようにお役に立つかという観点から編集いたしました。
(編集担当:石北 正道)
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特集/鋼製管推進工法
〜お助けマン&最後の切り札〜
推進工法は、管きょ工事の敷設において、最も省資源・省エネで環境に優しい工法として認知され、多用されてから久しいものがあります。
このうち「鋼製管推進工法」における外殻鋼管の推進については、パイプルーフや山岳トンネルの先受けとして、古くから用いられてきた馴染みのある方式で、いわば老舗的な存在です。
鋼製管推進工法には、オーガ式、ボーリング式のほか、パーカッションによる圧入式や泥水式などがあります。
これらの方式は、鋼管をさや管として推進する二重構造の特性から、河川や軌道下の横断工事に採用され、また、推進管の損傷が懸念される砂礫、玉石、転石、岩盤などの過酷な地盤に適用されています。
同方式の多くは、泥水式を除き、推進のメカニズムから可能推進延長が、空気衝撃ハンマ・ラムによる圧入方式で20〜30m、オーガ式が40〜50m、ボーリング式(二重ケーシング方式)においても50〜60mと比較的短いことが弱点と言えます。
しかし、鋼製管推進工法に代表されるボーリング式とオーガ式においては、方向制御にやや難点があるももの、マンホール等の既設構造物への切削接続のほか、掘削ビットを引き抜いて交換することにより、支障となる杭や鋼矢板の切断が可能なことから、推進工事分野では、過酷な施工条件下で用いられ、また、他の工法がトラブルに見舞われてお手上げ状態に陥った場合に、レスキュー工法としても採用されています。
現在、鋼製管推進工法において、国交省で示されている標準歩掛りは「オーガ掘削鋼管推進工法」のただ一つです。
これは前記のとおり、鋼製管推進工法が主に玉石や転石が出現する地盤や、杭等の支障物を切削除去するなどのアブノーマルな施工条件での採用例が多く、標準的な歩掛りへの反映が困難であること意味します。
本特集では、鋼製管推進工法が過酷な地盤条件に挑み、また、施工途中における予期し得ない支障物や地盤に遭遇し、これらを克服した施工事例を紹介しています。発注者には、やや華々しさに欠ける鋼製管推進工法が、推進工法に果たす重要な役割と使命をご理解頂きたいと願っています。また、鋼製管推進工事に携わる専業者には、他社や他分野の技術開発にも注視して頂き、自社技術の新たな踏み出しの一歩となれば幸いと存じます。
(編集担当:阿部 勝男)
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特集/日本の推進技術・最前線
本誌7月号は、毎年下水道展の開催に合わせ、世界に誇る日本の推進技術の現状を広く紹介することを目的に「日本の推進技術・最前線」を特集テーマとしています。
人類の技術の歴史は、古くはエジプト、メソポタミア、インダス、そして黄河で様々な発明や発見がなされ、古代ギリシャでは水力、風力、蒸気を利用した動力に関する技術革新があり、ローマにおいては高度な技術を用いて大規模な建造物が建設され、現在にも数多く残されています。その後、19世紀に入ると技術革新による工業化が驚異的に進み、それまでの家内生産から、石炭、石油、天然ガス等のエネルギーを使用した産業革命が起こりました。そしてさらに、現在は情報革命という技術革新の流れの中で、様々な分野において急速にそして加速度的に技術が進歩しています。
推進工法は、今から120年前の1896年、アメリカ北太平洋鉄道軌道の配水管の横断に用いられたのが最初と言われ、日本においては、昭和23年、国鉄尼崎線軌道下に内径600mmの鋳鉄管の敷設に初めて使用されました。わが国では、昭和30年代後半からの工業化による急速な経済成長に伴い都市部に人口が集中し、交通施設、エネルギー供給施設、下水道施設などライフラインの整備が急速に進められました。このような都市機能の向上を図る社会資本の建設工事において、地中埋設管はそれまで開削工法で敷設されるのが一般的でしたが、工事に伴う交通障害や振動・騒音問題等から推進工法は都市トンネルの施工技術として多く利用されるようになりました。
推進工法は、昭和32年、動力式ジャッキの開発、昭和35年、ボックスカルバートの推進に成功、昭和40年、カーブ推進の施工および泥水加圧セミシールドの施工、昭和51年、泥土加圧推進工法の施工、昭和52年、小口径管推進工法(圧入方式)の開発、昭和56年、泥濃式推進工法の施工、平成17年、超大口径管推進工法の施工というように発展してきました。特に昭和50年に管内有人作業はφ800mm以上とされたことから、小口径管推進工法において無人化施工技術が急速に進みました。その後も、関連技術の改良・開発により、施工能力の向上および適用範囲の拡大に向けた技術の高度化が進められ、さらに、改築推進や障害物対応技術など新たなニーズに対する技術開発も進められています。
本号では、世界の最高水準を行くわが国の推進工法の技術情報について、できる限り最新のものを読者の皆さんに紹介できるよう務めました。本特集が読者の方々の知識を深めるとともに、推進工法が社会資本整備のためにより一層活用される一助になれば幸いです。
(編集担当:西口 公二)
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特集/推進工法の基礎知識(3) 泥濃式編
今回は、泥濃式推進工法についての特集です。泥濃式は、泥水や土圧に比べ歴史的に新しい工法になります。しかし、大中口径推進工事全体に占める施工延長は、泥濃式が近年一番多く施工されています。その施工範囲は大中口径管推進では、呼び径800〜2200が施工可能な範囲ですが、最近では呼び径2400での施工実績もあります。また、近年の施工実績の中で、総延長に対する比率では、全体の約6割を超えています。このように泥濃式が多く採用されている理由は、掘進機の構造と推進設備において、他工法に比較し、複雑ではないことだと言われています。その簡易構造の中には、土圧管理、泥土の性状維持、排土方法など、泥水式や土圧式に比べ、特化したものとなっています。また、設備においては、主である吸引排土設備と高濃度泥水と滑材注入設備により簡素化の工夫によって、施工拡大に大きく貢献しました。
近年、泥濃式推進工事では、あらゆる難工事に挑戦しています。その進歩は、専業者のたゆまぬ努力があったからこそ現在に至っているのではないでしょうか。昨今推進工事だけに限らず、安全・品質・工程に対する顧客満足度をより高めているのはどこにあるのか?土圧管理、土量管理はどうしているのか?等、泥濃式推進工法の基本概念を、より一層掘り下げて解説し、泥濃式の本質を理解していただけることを目的としています。
(編集担当:舩橋 透)
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特集/推進工法の基礎知識(2) 土圧(泥土圧)式編
推進工事の歴史は、刃口式推進工法すなわち、切羽を開放し自立した地盤を人力掘削する方法で始まりました。この工法では、掘削対象土質があくまでも自立していることが原則ですが、地下水圧があったり、崩壊性の高い地盤では、補助工法を併用する対策を必要とします。その頃の推進専業者は、たくさんの手掘り業者がいました。私も入社したころには、まだ、手掘り推進工事もそこそこにはあった時代で、推進精度の測量機据付に戸惑っていると職人に怒鳴られたのを思い出します。その刃口式推進は切羽を直接掘削するため、切羽の状況(土質状態)を見ながら掘削できます。しかし、密閉型機械推進では、その土質を直接確認することはできません。ただし、泥水式とは異なり、土圧式は、泥土を直接見ながら推進することで、塑性流動性の良否判断しながら推進ができるため、ある意味最も刃口式に近く、掘削土砂の状態を確認しながら掘進する工法ではないかといえます。
このような土圧式推進工事は決して消える工法でなく、むしろ、大口径や、超大口径などでの難条件下では採用の増加が見込まれる工法です。この特集号は、今まで土圧式推進工事に携わらなかった方にも有効な資料として提供できるように編集しました。
4月号に引き続き、推進工法の基礎の第二弾として、土圧式をクローズアップいたします。この特集号では、土圧式の基本概念を理解していただき、工法の特徴や特有の機械設備とその構造等をわかりやすく解説し、土圧(泥土圧)式に特化した知識を深め、施工条件からの工法選定の手助けとし、安全な工法選択と確実な施工を目的にしたいと考えています。
昨今の推進工事で採用されている工法は、泥濃式が一番多く採用されています。次に泥水式となっており、土圧式は大中口径管推進工事の中で、年間の推進延長に対し、1割程度でしかありません。しかし、シールド工事においては、圧倒的なシェアを占めているのが現状です。なぜ、土圧式推進工法のシェアが少ないのかは、コストパフォーマンスに反映できないからなのかもしれません。掘削添加材の選定、配合(濃度)、注入率(注入量)が鍵となり、掘進操作ではトータルパフォーマンスの見せ所ではないかと思っています。また、掘進での切羽管理では、他の工法よりも確実に安定した管理ができる工法であるといっていいでしょう。その概念については、今回の特集の総論および解説を読んでいただき、ご理解していただけると思います。
(編集担当:舩橋 透)
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特集/推進工法の基礎知識(1) 泥水式編
推進工事の歴史は、開放型として刃口式推進に始まり、今では機械式密閉型推進が主流となっています。その経緯においては様々な方式を試行錯誤しながら開発されてきました。大中口径管推進においては、泥水式、土圧(泥土圧)式、泥濃式と大きく三つの工法が確立しています。また、小口径管推進においては、使用する管種から高耐荷力管推進と低耐荷力管推進に大別され、鋼製管推進や改築推進、また、超大口径管推進に至るまで大小問わず多様化しています。
思い返せば、2013年6月の「特集/推進技術『きほんのき』」と題して推進工法の基本に立ち返って、各工法別や管理対象別に基本的な原理や遵守事項をそれぞれの専門家に論じていただきました。今回は、大別される泥水式を始め土圧(泥土圧)式、泥濃式に分けて、工法毎の特集を組み工法の特長やそれに特化した設備や材料等を専門家に論じていただき紹介したいと思います。
その第一弾では、泥水式をクローズアップいたします。ここで泥水式の基本を理解していただき、工法の特長や特有の機械設備とその構造等をわかりやすく解説し、泥水式に特化した知識を深め、施工条件からの工法選定の手助けとし、安全な工法選択と確実な施工を目的にしたいと考えています。
最近の推進工事現場においては、土木の知識だけでは施工(安全、品質、工程)管理することはできません。推進設備において、機械はもちろん電気の知識も必要です。また、使用する材料においては、理化学的な知識も重要となります。そのほかでは、曲線施工において基礎的な三角関数は必須です。従って、推進工事に従事する技術者は幅広い知識を持たなければなりません。それに加え、知識があればどんな施工も可能とは言い切れません。その重要なことは人を使うこと、共同作業をすることです。どの仕事でもコミュニケーションをとることが重要となります。また、推進工事の場合、3〜5人を1班編成とする場合が多く、その班編成を変えずに移動し施工する状況がほとんどのため、息の合ったメンバーで生活を共にしながら推進施工をし、パターン化していますが、その人たちの平均年齢も年ごとに向上し、中には70才を超えている方も多々見受けられます。近年高齢者の制約は、高所作業や切羽作業を避ける配置となれば、益々専業者が減少し、推進技術の継承・伝承されないままになりつつあるのが現状です。
そこで、推進技術の伝承の資料として、推進工事に携わる人たちに役に立つ参考書となればと思い、推進工法の基礎知識?泥水式編を特集いたします。
(編集担当:舩橋 透)
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特集/推進施工トラブルの“芽”を摘む
推進工法の基本は、道路上のわずかなスペースに設置した立坑から掘進機(あるいは先導体)を投入し、地中を掘進しつつこれに推進管を後続させることで、道路下の所定の位置に管路等の構造体を構築することです。その特質は、道路を上から大々的に掘削することがないため、大型の建設重機の稼働に伴う騒音、振動、大気汚染などが少ないことに加え、道路上の使用区域が立坑付近に限定されることで、交通障害を極度に軽減できることです。正に、推進工法は、街中の人の生活と環境に優しい非開削手法として、昭和40年代以降、全国の下水道整備事業で活用され、その施工技術を進化させてきました。
一方、推進工法の最大リスクは、地中をほぼブラインド状態で掘り進むことにあります。したがって、推進工事での生命線は、掘進する位置での土質状況を、如何に事前の土質調査で確実に把握できるかです。もちろん、その掘進計画線上に人工的障害物(先行工事で使用した残置杭など)や自然的障害物(流木や巨石など)の存在が懸念される場合には、より詳細な事前調査、探査が望まれます。とは言え、土質調査で使用されるボーリングロッドは通常φ66mmですので、数100m掘進の1スパン中に数個所ボーリング調査を実施したとしても、所詮、大地の様子を針孔から覗いたことに過ぎないと言えます。一つひとつの推進工事は、そのレベルでしか過ぎない土質調査結果をガイドブック、羅針盤として、リスクが潜む地中を発進立坑から到達立坑に向け掘り進むことになります。
今月号では、推進工事に伴う施工トラブルを特集に取り上げました。推進工事は、そのほとんどが下水道事業などの公共事業として実施されることから、その施工トラブルには、いつでも多くの関係者から関心、注目が寄せられます。
一つの推進工事ついては、計画設計段階での推進管の管材と管径、計画線の平面、縦断位置決定、発進、到達立坑の位置決定から始まり、掘進計画線上の土質調査結果から掘進方式を決定し、それに基づき実施設計、工事費積算が行われ、適切な入札手法を経て、施工建設業者との工事請負契約がなされます。工事受注者は設計内容を十分照査したうえで施工計画書を作成し、発注者の承認の上、これに基づき推進工事に必要な機械、設備を調達し、掘進工事に着手したのち、綿密な施工管理により高品質の推進工事は完了します。この一連の過程の中に、施工トラブルを誘発する多くの“種”が蒔かれ、そのうちの一つか二つが誰も気付かぬうちに“芽”を出し、大きく育ち、トラブルの正体として施工者の眼前に現れます。計画設計で無理なルート設定をしていないか、土質調査は現地状況を確実に把握するうえで確実かつ十分か、設計・積算で工事費縮減のみに着目し適正さを欠いていないか、施工計画で工期上の無理をしていないか、設備計画は現地状況に適合しているか、そして施工管理は万全であったかなど、施工トラブルの“種”と“芽”はどこにでもあるのが実態です。推進工事の実務に関わる技術者が、自らの業務のなかでできるだけ“種”を蒔かないこと、見つけた“芽”を摘むことを必死に心がけることが、高品質の推進工事を世に送る必須要件です。
今月号で紹介する推進施工トラブル事例は衝撃的ですが、ある種、レアケースであることは事実です。下水道事業で実施される推進工事は、平成25年度において施工延長373km、8,500スパン、最盛期の平成10年当時、施工延長1,270km、22,000スパン、そのほとんどの施工現場では、優秀かつ良心的な推進技術者が、施工トラブルを誘発する“種”を蒔かず、見付けた“芽”を丹念に摘むことで、高品質の推進工事を残してきた実績があります。今月号の特集から、推進施工トラブルの“種”と“芽”の所在を探っていただければ幸いです。 (編集担当:石川和秀)
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特集/管路設計を自在にした
推進・シールド切換型工法
私たちが生活するうえで必要不可欠な上下水道、電気、ガス、通信等のライフライン設備のほとんどが道路下に埋設されており、下水道設備は約46万km、水道設備は約64万kmで膨大な設備量(ストック)となっています。さらに都市部においては、地下鉄、道路等の交通網や地下街等の商業施設も地下空間を利用していることもあり、地下空間は極度の過密状態にあります。
このような状況において東京都、神奈川県、大阪府等の大都市部における下水道処理人口普及率は、95%以上となっており、水道普及率もほぼ100%となっています。しかし、近年のゲリラ豪雨の増加や市街地の進展等により雨水の排除能力を超える雨水流出が頻繁に発生しており、都市浸水による市民生活への被害が増大しています。
国土交通省では浸水被害を最小に止めるために地方公共団体と一体となった総合的な浸水対策を推進しています。ハード面の対策の一つとして雨水管路施設の増補、バイパス管による既設管路の増強及び貯留管・貯留施設の新設等を重点施策として掲げており、都市部では地下空間の埋設物等の輻輳により開削による管路の敷設は困難であるため、非開削工法のニーズが今後も高くなってきます。
これまでも、非開削工法による管路の敷設方法として、トンネルの先端に設けられたシールドと呼ばれる鋼製の円筒の中でセグメントを組み立てながら掘削を進めて行く「シールド工法」と発進立坑に設置したジャッキで管を到達立坑まで押し込んでいく「推進工法」が採用されていました。シールド工法は1940年頃から使用されはじめ、60年代後半に泥水式、土圧式等の密閉型工法の開発により飛躍的な発展を遂げました。一方、推進工法が国内で初めて採用されたのは、1948年に国鉄尼崎港線の軌道下横断のガス工事で、その後、密閉型推進工法、小口径管推進工法が開発されました。さらに近年では推進工法の長距離化及び増径化に拍車がかかり、これまで推進距離及び推進管径等によりシールド工法の領域とされてきた工事へも推進工法の適用領域が大きく広がってきました。
このような背景から、狭隘で急曲線施工等の厳しい施工環境への対応、施工期間の短縮及び施工コストの低減を可能とするためにシールド工法と推進工法の長所を融合させた『推進・シールド切換型工法』が広く採用されています。
本号では、多様な施工条件への対応を可能とした『推進・シールド切換型工法』の開発経緯、技術の改良、設計採用の背景及び発注者からみた技術要望等を紹介することで今後の普及拡大を期待しております。
(編集担当:前田公洋)
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特集/海外で活躍する推進技術(The SUISHIN)
日本の推進技術の海外進出は30数年前からですが、ここ数年で急激にアクセルが踏み込まれ、本格的な海外展開がいよいよ始まる機運になっています。その原因としては国内市場の縮小に伴って、新たな市場を海外に求めなければならないというような受動的要因はもちろんありますが、下水道管路をはじめとする国内のインフラ整備を60年以上に亘って担ってきた日本の素晴らしい技術を、これから本格的にインフラ整備が開始される場所で再度活かしていきたいという積極的な考えが根本にあると思われます。
そのような考えのもと、従来はそれぞれの企業単独での進出でしたが、最近では官と民、民と民が連携して事業を展開していく形態が多くなってきています。具体的には外務省、国交省、経済産業省をはじめとする関係官庁が先陣を切って相手国との橋渡しをしていただき、そのあとでも案件化調査、事業形成、技術者交流などの事業を一体となって進めることによって、より確実に迅速に海外展開ができるようになってきました。また、より実務に近く経験のある地方自治体の技術ノウハウを、そのような海外のプロジェクト形成に生かしていくような活動が多くなってきたことも大変力強い変化だと思われます。
過去にも数回推進技術の海外展開をテーマとした特集を行ってきましたが、今月号ではより具体的に推進工法の海外展開を、まず、国関係の官の立場、地方自治体の立場からその活動の意義、目的および現状の取り組みと将来展望などをご紹介していただきます。次に現実的に施工を行っている、あるいは施工を完了したプロジェクトについて発注側からは推進工法採用の背景やきっかけおよび今後への期待などを解説していただき、施工者側からは実際の施工状況および苦労話を含めた問題点などを解説していただきます。また、最後には海外水プロジェクトの案件形成に取り組んでおられる第一線の方々にお集まりいただいて、開示できる限りの具体的な案件情報や今後の展開、我々推進技術に携わる企業や個人へのアドバイスなどを忌憚なく語っていただきます。
読者の中には海外進出をもうすでに行っている方々も多くおられると思いますが、まだ進出には踏み切れなくても興味を持たれている読者もたくさんおられることでしょう。
今回の特集を読んでいただいて、さらにもう一歩海外進出に向けて前進されれば幸いですし、少なくとも日本の推進技術は海外から求められる技術であり、日本の推進技術にかかわる方々が「推進技術チーム日本」のようなチームとして手を携える必要性を少しでも理解していただければ、今回の特集の意義があったものと考えます。
(編集担当:中野正明)
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