< 2020年8月号 >
特集/推進工事の施工管理における工程・品質・安全
総論:国土交通省、(公社)日本推進技術協会
解説:アースナビ推進工法協会、機動建設工業(株)、(株)協和エクシオ、サン・シールド(株)、地建興業(株)、(株)福田組、りんかい日産建設(株) ほか
連載:巻頭言/今月の推論/随筆/ゆうぞうさんの山紀行/会報/その他

月刊推進技術
2020年のスケジュール

月刊推進技術
編集委員会名簿

2017年12月号

特集/長距離推進技術の最前線
〜長距離推進を可能にした“各分野の技”〜

  推進工事70年の歴史の中で、ここ十数年の技術革新には覚醒の感があります。
 かつて、呼び径3000を超える工事や長距離・曲線施工は、周面摩擦抵抗と測量等の技術的な隘路から、シールド工法が担ってきた経緯があります。
 しかし、現在では貯留管や雨水増強管等のニーズを受けて、呼び径5000までの推進管が規格化されるとともに、推進技術や滑材等の周辺技術、管材、計測技術等の開発と改良を重ね、1スパンが1,500mの長距離推進や、曲線半径R=20〜30mのS字曲線や複合曲線施工も可能とし、シールド工法とのボーダレスの時代に入り、長距離推進施工のシェアが拡大しています。また、小口径管においても同様に、高耐荷力管推進では300m、低耐荷力管推進においても100mを超える施工実績があります。
 これら推進距離の飛躍的な伸びは、掘進機(先導体)や軸方向耐荷力が大きく、かつ曲線にも対応可能な多種多様な推進管の開発をはじめ、元押および中押装置、推進力低減措置としての滑材と注入方式、曲線施工への計測技術の改良や開発、さらにはこれらを包括する遠隔制御等の高度な施工技術革新の積み重ねによって可能としてきたものです。また、同時に、施工実績から得られた知見に基づき、
(公社)日本推進技術協会において、曲線推進や泥水式・土圧(泥土圧)式、泥濃式等の推進力算定式の整理を行ったことが、ユーザ側における長距離推進の信頼度を増し、長距離推進施工の採用を浸透・加速したものと思われます。
 反面、長距離推進施工では、地層の変化のほかに、事前調査では把握できない事項も多く介在しています。推進工法では一般に、施工途中での中断は推進力の増大を来たすために時間的な制約が伴い、かつ補助工法の採用にも選択肢が限られていること等からリスクを背負うことになります。確かに従前との比較では、管内作業の省力化とシステム化が図られ、また、計測技術が格段に進化し、安全・確実性が確保され信頼度も高まりつつあります。しかし、これまでのところ、掘削方式によって多少の差はあるものの、大中口径管推進施工では長距離推進の如何にかかわらず、狭い管内空間での常態的な作業が伴い、完全な無人化作業に至っていません。したがって、安全性の担保と作業環境の保全が求められます。
 長距離推進施工は、本誌の事例報告等で度々紹介され、また、Vol.28 No.2(2014年2月号)特集「長距離推進のゆくえ〜長距離推進を可能とした各分野における技術革新〜」として取り上げられた古くて新しいテーマです。
 本特集では、大中口径管および小口径管推進の長距離化に向けて、管材や掘進機(先導体)をはじめ各分野における最新の取り組み状況と併せて、推進力の低減方法、排土や計測技術等に関する様々な工夫と配慮すべき事項、安全管理上の留意点等、幅広く言及していただいています。
 今後、長距離推進を採用される自治体やコンサルタント職員にとって、これらを設計図書に反映していただくことにより、さらなる安全の確保と併せ、適正な工事費積算の一助となれば幸甚です。
(編集担当:阿部勝男)

2017年11月号

特集/多様な断面で多様な分野に適用される推進工法

 推進工法は構造物そのものである推進管を発進立坑から押して、地中を移動させて構造物を完成させる技術です。推進管は施工中には推進力および周辺の土圧や水圧を受けますが、完成構造物としては推進力の影響を削除して土圧および水圧のみを考慮すればよいものです。そのためヒューム管をはじめとする円形管が力学的には優位であり、実際施工されているほとんどの断面形状は円形です。しかし完成後の構造物の使用目的によっては、円形より矩形やその他の形状のほうが効率的な場合があります。また土被りの制約や近接埋設物との離隔を確保するためには円形管ではなく、その他の形状が要望されるケースなども増えているようです。
 推進管の完成後の用途としては雨水、汚水、農業用水などの液体を搬送する流路や都市ガス、天然ガスなどの気体を輸送するパイプラインのさや管などがあります。これらの用途には総じて力学的優位性だけでなく円形管が使用目的に対する合理性からも優位ですので、ヒューム管、塩ビ管、鋼管、ダクタイル管などが圧倒的に多く使用されています。その他の用途として古くからあるものとしては電力洞道、共同溝、地下道など複数の管を共同で収納したり人道として使用したりするための函きょがあります。また、最近では道路や鉄道路線の分岐合流部などの大規模地下空間構築の先行土留め(支保工)としての用途なども注目を浴びています。これらの用途には矩形やアーチ形状などの断面が、その使用目的に合致するとともに土被りや近接埋設物への影響などでも優位なケースが多くあります。また、1本の推進管は円形ですがそれを縦横に連続して施工することによって全体として大規模地下空間の先行土留めとして使用するケースもあります。
 これから数年をかけて2020年東京オリンピック開催に向けた交通アクセスの整備やリニア新幹線などの大プロジェクトが本格化しますが。推進工法がこれらの大規模地下空間築造に寄与するためには、その用途に応じた断面形状、断面配置を提案してその技術をPRしなければなりません。
 今月号では「多様な断面で多様な分野に適用される推進工法」と題して、矩形函きょをはじめとする円形以外の断面形状の推進技術やパイプルーフなどの複数管で地下空間を保持するための推進技術を紹介するとともに、その問題点、要求事項などを抽出して、今後のさらなる推進技術の適用性の拡大を図りたいと思います。
(編集担当:中野正明)

2017年10月号

特集/推進工事に伴う補助工法

 工事の施工にあたっては、生活環境や社会活動に対し影響を最小限にし、安全で確実な工法を選定しなければなりません。
 推進工法は、開削工法では施工が困難であること、または不適であることにより採用されております。しかしながら、工事を進める上で環境面では「密集地では地下構造物やライフライン等の埋設物が錯綜していること」「郊外では主要構造物、インフラ等の対応」など。地盤的には岩盤の他、玉石層、礫層、砂、粘土・シルト層、などの堆積層とこれらの地層が複雑に入り組んだ自然地盤と埋め立てや造成等による人工地盤等があり、それぞれ「自立が不可能な地盤」「精度維持が困難な地盤」「掘削が困難な地盤」など推進工事を施工する上で種々の問題点があります。
 工事はこのような難しい条件下においても安全・高品質・工期の確保を図ることが要求されます。これには長期に亘る実績を基に開発・改善された掘進機や推進設備、技術力などにより対応しておりますが、土木・機械面の対応だけでは難しく補助工法による地下水の制御、構造物防護、地盤の安定・強化が必要となります。
 補助工法には「薬液注入工法」「高圧噴射攪拌工法」「地下水位低下工法」「凍結工法」などが上げられます。
 今月は設計・計画・施工する上で、工法の適用範囲や選定について参考にして頂きたく特集号として編集いたしました。
(編集担当:小野千代昭)

2017年9月号

特集/震災復興

 昨年(平成28年)は、4月14日の前震、同16日の本震による「熊本地震」が発生し、多くの人命を失いました。これに加え、6月にはその被災地を含む西日本地方に豪雨が来襲しました。また、9月には台風16号等による被害も発生しています。北海道においても6月、7月に記録的な豪雨が発生、8月に入り台風7号、11号、9号と3つ立て続けに上陸しました。8月末には台風10号が過去に見ない動きを見せ、史上初めて太平洋から東北地方に上陸し北上、農地、農業施設のほかインフラ等にも大きな被害をもたらし、関東地方では中小河川や下水道からの溢水が頻発しました。今年7月の九州北部豪雨では流木が氾濫被害を拡大させました。このように近年は、繰り返す自然の猛威、自然との共存の難しさを感じ、災害大国「日本」であることを再認識させられる機会が非常に多くなったように思います。
 さて、代表的な地震被害を振り返りますと、今年は、平成7年1月17日に発生した「兵庫県南部地震」から22年、平成16年10月23日に発生した「新潟県中越地震」から13年、平成23年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」から6年にあたる年となります。昨年発生した熊本地震はもちろん、東日本大震災についても官民が連携・協力しインフラの復旧・復興が進められていますが、地域住民の方にとってはこれからの長い道のりのほんの一部に過ぎないものです。
 本号では、巻頭言において官側を代表し熊本市上下水道事業管理者の永目様に「復興元年」の取り組み、意気込みを語っていただきました。そして特集では上下水道などインフラの復旧方針、復旧工法の採用事例について紹介します。その着眼点は、次のように区分しました。
 1)災害調査の早期化
 2)液状化被害の応急対応
 3)管路施設の本復旧(原型復旧)
 4)津波リスクの回避(震災復興事業)
 まず、災害復旧の早期化については、東日本大震災までは復旧調査のルールが統一されていないことによる調査や書類策定の手戻り等、少なからず現地での混乱を招いていました。熊本地震では、この改善が図られ、また関係者の蓄積された経験により、短期間に多くのリソースを投入し、災害復旧調査を早期化することができました。一方で、新たな教訓や課題も得られました。このことについて事例紹介したいと思います。
 次に、東日本大震災では関東地方を中心に広域の液状化被害が発生し、地下に埋設されたライフラインも破断、蛇行、浮上、継手離脱等の被害が生じました。埋設深が大きい管路は小さい管路に比べ被害が軽微であったようですが、マンホールも含め管路施設では多くの機能支障、道路陥没等の二次災害の危険が確認されました。これまで、埋設管路の埋戻し部の液状化被害が注目されていましたが、広範囲の被害は復旧に時間を要するため、応急復旧工法の選択が重要となります。
 その本復旧にあたっては、原形復旧が基本となります。この場合の施工法には、開削工法、推進工法、管更生工法等が用いられ、マンホールとの接続部や管きょの継手には挙動への追従性、土砂の流入防止等が配慮されました。
 また、東北地方をはじめ太平洋沿岸部では津波被害を受け、抜本的な対策は高台移転など津波を避ける対策に拠らざるを得ず、その復興には長期を要しています。このような面的な対策では、上下水道の新規整備が必要となっています。
 一概に「震災復旧・復興」と言っても、被害の形態や規模により、様々な手法が選択されることとなりました。大規模な被害を受けた地域では原形復旧だけではなく、バックアップ機能の確保などを含めた対策を講じています。このような対策の中では、推進工法も採用され、復旧・復興に貢献しています。
(編集担当:田口由明)

2017年8月号

特集/さまざまなインフラ整備に活躍する推進技術

 我が国の最初の推進工事は、昭和23年国鉄尼崎線軌道下に敷設された内径600mmの鋳鉄管で、ガス管でした。それ以降、推進技術は下水道の普及とともに発展し、今や下水道管路建設においては必要不可欠なものとなっています。そんな下水道工事のイメージが強い推進技術ですが、下水道普及率が概ね80%に達しており、それ以外の分野でも大いに活躍しています。
 下水道以外にも、地下に埋設されている社会生活を営む上で必要なライフラインは数多くあります。上水道、電気、ガス、通信等、それらのパイプライン建設にも推進技術が数多く採用されています。しかしながら、それぞれの分野で必要となる管路線形や求められる技術条件にはもちろん違いがあり、それらに対応すべく技術開発がなされているのです。具体的な例では「長距離・曲線」や「円形以外の矩形断面」の推進などです。
 下水道をはじめ、それらのライフラインの多くは高度成長期に建設されたもので、今後、大量の更改時期を迎えます。それらの更改工事においても推進技術の活躍の場面が出てくると考えています。ただし、単純な新設工事にはない技術条件が求められることも容易に想像がつきます。今回の特集は、推進技術が多様なパイプライン建設に活躍していることをあらためて知っていただくとともに、下水道以外の分野のニーズへの対応するために、またパイプライン更改に対応するために、今後どんな技術開発が必要になるかを皆さんと考える機会になればと期待します。
(編集担当:森 治郎)

2017年7月号

特集/推進技術・最前線

 我々が生活する身近な所においては、下水道、水道、ガス、電気、通信はもとより高速道路、鉄道、通路、商店街等のライフラインがあり、その多くは地中に管きょとして埋設されています。これらの管きょの埋設には、地上から掘削してその底面に既製の管を配管し埋戻す開削工法、あるいは地表を掘削することなく掘進機(シールド)で前方地盤を掘削しトンネルを築造する非開削工法が用いられています。非開削工法には、掘進機内でセグメントを組み立てるシールド工法と既製の管を地中に圧入する推進工法があります。
 この中で、推進工法は、計画管きょラインの両端に発進立坑と到達立坑を設け、推進設備を備えた発進立坑から油圧ジャッキにより掘進機を地中に圧入し、掘進機の後続に既製の管を順次継ぎ足し、管列を推進することで掘進機を到達立坑に到達させ、発進立坑と到達立坑の間に管きょを構築するものです。従って、開削工法に比べ路面を掘削することが少なくなるため、工事中の路面使用面積の減少、騒音、振動、粉塵等の工事公害の低減、交通や市民生活への影響の軽減等、都市環境対策に優れています。
 推進工法の歴史に関しては、19世紀にアメリカ北太平洋鉄道化でコンクリート管が推進工法で埋設されたという文献があります。また、20世紀初頭の第一世界大戦中にヨーロッパ戦線、日露戦争等で坑道戦に用いられた記録があるようです。一方、日本における推進工法は、1948年に、さや管として内径600mmの鋳鉄管を軌道下の横断のために施工したのが始まりです。
 初期の推進工法は、ガス、水道、通信ケーブル等のさや管を、軌道、水路、道路等を横断して埋設するための特殊な工法でしたが、徐々に道路縦断方向の管の埋設にも使用されるようになり、1963年12月の生活環境施設整備緊急措置法に基づく第1次下水道整備5箇年計画以降は、下水道事業に大いに活用されました。さらに、需要の拡大に伴いシールド工法等の技術を取り入れ安全性の高い工法へと進展し、社会的要求に応じた多種多様な小口径管推進工法もいまやあらゆる対応が可能となっています。
 「これって可能?」「○○○○工法ってどんな工法?」「円形?矩形?」「急曲線できる?」「何m押せるの?」。発注者や設計者は、各工法協会に問い合わせをして、この線形でこの径、土質はこれだけど、推進可能ですか?といった単刀直入の問い合わせから始まります。
 推進工法に詳しい人でも工法名だけではわからない場合もあります。本特集では、下水道展’17東京に出展する当協会会員目線で、工法の分類、特長、セールスポイントなどに絞り他との比較ができるようにしました。
 是非、この一冊を活用していただきたいと思います。
(編集担当:舩橋 透)

2017年6月号

特集/内水氾濫から都市を守る推進管
〜内圧対応推進管で貯留管路を早く経済的に構築する〜

 近年、地球温暖化に伴う気候変動の影響で、日本各地で大雨等による浸水被害が発生しております。
 日本は梅雨をはじめとして多雨地域であるわけですが、事前に予知できない突発的なものへと雨の降り方が変わってきたというのが皆さんの印象でしょうか。迷走する台風、線状降水帯、そしてゲリラ豪雨といったことで、従来の規模を上回る雨、予測困難な雨が降り注いでいます。その結果、河川の洪水をはじめとして、対策の追いつかない都市では雨水が街に溢れるなど、様々な被害の状況がメディアを通して映し出されることが多くなった今日です。
 特に都市部では雨水が路上に溢れ、地下街にまで流入するなど、行き場を失った雨水は、内水氾濫といった形で私たちの生活を脅かし、都市機能を奪いかねません。そのような中、雨水による危険を効果的に防ぐため、一時貯留や既設の管路を活用など効率的な手法も含めハード・ソフト共に対策が強化されております。
 都市部における道路交通状況や輻輳する地下インフラを考慮しますと、貯留管や既設ストックを有効活用するためには、比較的小さな立坑から長距離・曲線敷設が可能な推進工法による貯留施設や管路の構築が現況に最も適した施工方法の一つであるといえます。そのような状況の中、推進工法に使用する管にも内水圧に対応した推進管のニーズが高まってまいりました。
 現在、(公社)日本下水道協会において下水道推進工法用鉄筋コンクリート管(JSWAS A-2)の規格改正作業が行われております。今回の改正では推進管に内圧規格が追加されることが主な改正内容になる模様です。鉄筋コンクリート管に内圧管が加わることで、管種選定の幅が拡がり、これまで以上に経済的な管路構築が可能になるものと思っています。推進管に内圧が作用する場合、管の内外から圧力が作用するので力が相殺されるように思われがちですが、実態はそうではありません。外側からの荷重に加えて、内水圧による内圧荷重が作用することで管にはより大きな応力が生じます。したがって、より強度の高い管種が必要になるケースが多く、大深度、高水圧、高土圧といった様々な設計条件に応じた適材適所の管材の適用が重要になります。
 本号では、特に難度の高い貯留管の推進工事例などを都市の浸水対策計画も交えてご紹介すると共に、内圧推進管の技術や課題、適用範囲を理解していただき、今後の貯留施設計画の参考にして頂ければと思います。
(編集担当:人見 隆)

2017年5月号

特集/既設構造物への直接到達 その2

 我が国では、経済発展とともに、都市の地下には、上下水道、ガス、電気、通信等のライフラインが縦横に敷設され、さらに鉄道、道路、共同溝など極めて重要な構造物が地下空間に多く建設されている。しかし、経済的活動や人々の生活の質の変化とともにますます都市が高密度化する中で、社会・経済的活動においてより機能的で、また安全で安心して暮らせる都市づくりが求められている。都市は、施設の機能を維持しながら過去に建設された建築物・構造物等を新陳代謝し、さらに新しい防災施設やライフライン等の施設を建設することによりさらにその機能を高めていく必要がある。
 地下にパイプラインを敷設する場合、開削工法よりも交通障害や工事に伴う周辺環境への影響を低減できる推進工法やシールド工法が用いられる。これらのトンネル築造技術は、特に我が国において、長距離、急曲線、大深度(大土被り)施工等の技術開発が進み、世界的に最も高度な技術に進歩した。
 我が国では現在、インフラ施設の整備が進み、地下空間に敷設、建設されたパイプラインや構造物の維持更新の時代に入りつつある。しかしながら、近年頻繁に発生する局所的な集中豪雨による浸水対策や、想定される大地震への対策など防災機能をより強化するための都市づくりの事業が進められており、地下にはまだまだ多くのインフラ施設の建設が必要である。
 これら事業の遂行において、トンネル工事の立坑を築造するためには、各種地下埋設物が輻輳化している都市部では埋設物の切り回しや防護が必要であり、経済的また工期的な負担だけでなく極めて施工が困難となる場合がある。また、交通量から規制が困難な道路や、工事の振動、騒音などが周辺環境に及ぼす影響から立坑の設置が困難な場合がある。このようなことから、近年、立坑を設置することなく、マンホール、管きょおよび建築物等の既設構造物に掘進機を直接到達させ管路を構築する工事が増えている。
 直接到達する方法は、既設構造物に開口部を設けることに対する構造物の補強方法、接合部の接合構造、また、掘進機が安全に到達するための地盤改良等の補助工法、あるいは掘進機の回収方法など技術的な課題は多い。
 しかし、既設構造物への直接到達は、交通障害および周辺環境に対する影響の低減だけでなく、既設埋設物の回避によるコスト縮減や工期短縮あるいは、到達立坑の省略によるコスト縮減効果が見込める可能性もある。さらに、掘削残土量の低減による廃棄物発生量の低減等を図ることも考えられる。
 このように立坑を設けることなく既設構造物に直接到達することが容易になれば、推進工法の適用性が飛躍的に拡大することが期待できる。今月の特集は、このように既設構造物に直接到達する工事が近年増えつつあり、その中でも特に計画・設計における配慮事項や留意すべき事項に焦点をあて、施工事例を紹介するとともに技術の現状と課題について報告する。
(編集担当:西口公二)

2017年4月号

特集/既設構造物への直接到達 その1

 我が国では、経済発展とともに、都市の地下には、上下水道、ガス、電気、通信等のライフラインが縦横に敷設され、さらに鉄道、道路、共同溝など極めて重要な構造物が地下空間に多く建設されている。しかし、経済活動や人々の生活の質の変化とともにますます都市が高密度化する中で、社会・経済活動においてより機能的で、また安全で安心して暮らせる都市づくりが求められている。都市は、施設の機能を維持しながら過去に建設された建築物・構造物等を新陳代謝し、さらに新しい防災施設やライフライン等の施設を建設することによりさらにその機能を高めていく必要がある。
 地下にパイプラインを敷設する場合、開削工法よりも交通障害や工事に伴う周辺環境への影響を低減できる推進工法やシールド工法が用いられる。これらのトンネル築造技術は、特に我が国において、長距離、急曲線、大深度(大土被り)施工等の技術開発が進み、世界的に最も高度な技術に進歩した。
 我が国では現在、インフラ施設の整備が進み、地下空間に敷設、建設されたパイプラインや構造物の維持更新の時代に入りつつある。しかしながら、近年頻繁に発生する局所的な集中豪雨による浸水対策や、想定される大地震への対策など防災機能をより強化するための都市づくりの事業が進められており、地下にはまだまだ多くのインフラ施設の建設が必要である。
 これら事業の遂行において、トンネル工事の立坑を築造するためには、各種地下埋設物が輻輳化している都市部では埋設物の切り回しや防護が必要であり、経済的また工期的な負担だけでなく極めて施工が困難となる場合がある。また、交通量から規制が困難な道路や、工事の振動、騒音などが周辺環境に及ぼす影響から立坑の設置が困難な場合がある。このようなことから、近年、立坑を設置することなく、マンホール、管きょおよび建築物等の既設構造物に掘進機を直接到達させ管路を構築する工事が増えている。
 直接到達する方法は、既設構造物に開口部を設けることに対する構造物の補強方法、接合部の接合構造、また、掘進機が安全に到達するための地盤改良等の補助工法、あるいは掘進機の回収方法など技術的な課題は多い。
 しかし、既設構造物への直接到達は、交通障害および周辺環境に対する影響の低減だけでなく、既設埋設物の回避によるコスト縮減や工期短縮、あるいは、到達立坑の省略によるコスト縮減効果が見込める可能性もある。さらに、掘削残土量の低減による廃棄物発生量の低減等を図ることも考えられる。
 このように立坑を設けることなく既設構造物に直接到達することが容易になれば、推進工法の適用性が飛躍的に拡大することが期待できる。今月の特集は、このように既設構造物に直接到達する工事が近年増えつつあり、その中でも特に施工方法や掘進機の対応等に焦点をあて、施工事例を紹介するとともに技術の現状と課題について報告する。
(編集担当:西口公二)

2017年3月号

特集/頼りになります推進工事技士

 推進工事技士から受ける印象に関して質問を投げ掛けると、推進工事に関する幅広い知識と高度な技術を有するプロフェッショナルという応答が異口同音に返ってきます。
 技術力の評価は高いが、残念ながら全国に10,197人(平成28年4月1日現在)登録された有資格者がその持てる力を発揮する対象工事件数は必ずしも十分とは言えず、資格が推進工事の設計及び施工管理・品質確保に生かされていないのではないかと懸念しています。
 国民の公共工事に対する批判の高まりを受け、公共工事の入札・契約制度に係る「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成13年2月16日)、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成17年4月1日)の施行に伴い建設業の健全な発達や公共工事の品質確保が要求されています。
 近年、推進工事は長距離推進、カーブ推進等が採用されるケースが増え、高度な技術力・判断力が要求されています。特に再構築に関しては、錯綜する地下埋設物が前提条件となるため以前に増してより高度な経験・知識・判断力・安全対策が必要になります。
 反面、発注者・建設会社・コンサルタントの置かれている立場としては、工事件数の減少により学ぶ・経験する機会が減少している傾向です。各方面において技術の向上・継承に取り組んでいると思いますが、このような背景においては、推進に関する総合的な技術力を有する推進工事技士の資格の取得とその活用を考えるのも有効な手段だと考えます。
 まずは、発注者において、有資格者の活用方法を検討していただきたい。活用に際しては性急な導入方式ではなく段階的な方法も一つの選択肢と考えられます。有資格者の少ない都道府県・市町村においては、制度導入は業界からの様々な意見が予想されますので、前述した長距離推進・カーブ推進等、難易度の高い推進工事から適用してはいかがでしょうか。これにより受注者の受験への意欲と同時に技術力のレベルアップが図れると思います。
 日本推進技術協会においても、有資格者が機械・電気・土質・力学の基礎知識に関するもの、施工計画・施工管理に加え法令規則等、幅広い知識の習得者であること。また、登録期間5年毎に講習会の参加を義務付け、諸法規・規格の改訂や最新の技術、災害防止・安全対策に関する講習を実施していることを幅広く情報発信していただきたいと思います。
 推進工事技士は高い技術力を有し、重要な役割を担う存在であることを再確認し、その技術を生かせる機会の増大に寄与することを願っております。
(編集担当:石北正道・佐藤徹)

2017年2月号

特集/多様な線形に対応する測量技術

 日本の推進工事は昭和23年(1948)に尼崎で国鉄尼崎港線の軌道下にφ600mmの鋳鉄管6mを推進したのが始まりであります。そして昭和35年(1960)には阪急電鉄神戸線の軌道下のボックスカルバート施工に推進工法が採用されました。また初めての曲線施工は昭和40年(1965)に熊本市内で施工されています。創成期であるこの時期に、ボックスカルバート施工や曲線推進が試みられたということは推進工法への期待の大きさを感じます。
 その後数多くの人たちにより様々な技術革新が行われて密閉型推進工法へと進化し、泥水式推進工法・土圧式推進工法・泥濃式推進工法へと発展してきました。また昭和52年(1977)に開発された小口径管推進工法も独自の分野に成長しヒューム管等の高耐荷力管は勿論、塩化ビニル管が対象の低耐荷力管の施工も可能にして曲線施工も行われています。このような幅広い技術提供により推進工事は様々な工種へ展開され、下水道を始め電気・ガス・水道・通信等のインフラ整備で活躍しています。これらの設備には各々特性があり完成した管体に求められる機能も違うものになります。すなわち下水道管は流下のための勾配が重要になりますがその他の設備では縦断勾配は目的に沿って任意に決定することが可能です。
 一方インフラ設備が整備されるに従い施工条件が難しい箇所が残るようになってきています。例えば立坑の構築間隔が長くなる場合、急曲線でないと収まらない配置や既設構造物のすぐ横を通る近接施工が必要な場合がでてきます。また様々な地下構造物の輻輳する区間に施工することも要求されます。このような要望に応えるため更なる技術改良を行い推進工事技術は現在に至っています。
 このようなニーズに答えるには、長距離・曲線・急勾配等の様々な線形が必要となります。またそれらの線形を実現するための測量技術も欠かせません。本号では「多様な線形に対応する測量技術」というタイトルで、推進工事で施工した様々な線形とそれを実現した測量技術をご紹介したいと思います。推進工事はφ800mm以上の大中口径管と小口径管がありそれぞれの線形への対応も違うものになります。それらについても言及したいと思います。
(編集担当:稲葉富男・茂木清顕)

2017年1月号

特集/将来へチャレンジする推進工法技術

推進工法は、様々な分野において活用が期待できる施工方法である。
 推進工法は、いまや長距離や曲線施工や超大口径・小口径の施工など様々な技術開発が進み、以前には困難と言われた個所での利用が可能となった。このため、下水管きょ以外にも、電線地中化・共同溝などの地下空間事業、連絡通路などにも利用されてきている。
 また、日本の推進工法技術は、海外でも注目されベトナムやインドネシアにおいて日本の企業が現地法人とともに密集した市街地での安全で、渋滞を最小限にする工事として注目されている。
 さらに、今後、管の老朽化にともない改築を行っていく必要があるが、更新のための工法として推進工法が期待されている。
 今月号では、新年号として推進工法の今後の多方面での利用方法や海外での活用方策およびそれに必要な技術開発や広報・宣伝の在り方に、各界の代表者から自由に提言をいただくこととする。
(編集担当:中島英一郎)

このページのトップへ

Copyright (c)2008-2015 LSP All Rights Reserved