< 2020年8月号 >
特集/推進工事の施工管理における工程・品質・安全
総論:国土交通省、(公社)日本推進技術協会
解説:アースナビ推進工法協会、機動建設工業(株)、(株)協和エクシオ、サン・シールド(株)、地建興業(株)、(株)福田組、りんかい日産建設(株) ほか
連載:巻頭言/今月の推論/随筆/ゆうぞうさんの山紀行/会報/その他

月刊推進技術
2020年のスケジュール

月刊推進技術
編集委員会名簿

2019年12月号

特集/トラブルを回避し適切な施工を約束する事前調査の必要性

 推進工法における近年の技術革新はめざましく、推進距離1,000mを超える長距離施工や曲率半径15m以下の急曲線施工などが可能になって、推進工法の適用範囲が拡大することは推進工法の将来にとって歓迎すべきことです。しかし、それにともなってトラブルの発生要素が多くなり、万が一発生した場合の重大性も深刻になっています。推進工法は時々刻々状況が変化し、それに対して的確な判断と対応が要求される工法であるため、数多くあるすべての施工現場で微細なトラブルを皆無にすることは不可能に近いと思われますが、事前の調査を十分に行い施工計画と現場における施工管理を厳格に行なうことによって格段に減少させることは可能ですし、またそうでなければなりません。事前調査こそがトラブルを回避し、適切な施工を約束する重要な一歩であるといっても過言ではありません。
 推進工法における事前調査で最も重要なのは土質調査であり、土質の想定違いによるトラブルが最も多く発生しています。そのため土質調査資料はできるだけ多くあることが望ましく、他工事の過去の資料なども参考にしてより正確な把握を心がけるべきです。この場合に留意すべきことは調査場所で、特に土質変化が想定される場所においてはジャストポイントの調査資料が必要です。地層が傾斜していたり断層があったりする場所ではほんの数メートルの離隔でまったく異なる地層になっているケースもあります。そのため発注者から提示された土質資料が近隣のもので、土質の把握に不安がある場合は、現地のジャストポイントで追加の調査を行なうことも必要です。
 また、設計書および事前調査資料などによって施工の概要は把握できますが、施工計画の立案、施工着手に当たっては現地の踏査が不可欠です。図面上での施工イメージと現地のイメージがまったく異なるケースがよくありますが、現地で得られる情報が反映されない施工計画は価値がありません。土質調査以外で必要と思われる調査項目としては、近接構造物(埋設物)、交通量や周辺環境、立坑および工事基地周辺などですが、いずれも事前の調査を怠ったためにトラブルになったケースがよく見受けられます。いいかえればこれらの事前調査を十分に行って、その結果の吟味を行っておけば、少なくともあとで悔やむようなトラブルを回避することが可能であるということです。
 本稿ではトラブルを防止することに注目して、事前調査の重要性について各分野の方に留意点などを語っていただきたいと思います。
(文:中野正明 編集担当:舩橋透)

2019年11月号

特集/下水道管路マネジメントシステムの実現に向けて

 下水道をはじめとする我が国の地下インフラは、建設当時想定されていた耐久年数をはるかに超えて、老朽化が懸念されるものが多くあります。建設当時から老朽化の問題は認識されていたとは思いますが、地上部の道路や建物の密集、他の近接埋設物の輻輳などの環境変化で「改築」が進んでいるとはいいがたい状況にあります。建設当時は開削による管路埋設が主流でしたが、現状では管更生で対応できる程度であればまだしも、更新(管路の敷設替え)を行わなければならない箇所については深刻な問題になっています。毎年管路の老朽化などに起因する陥没事故が全国で数千件発生しており、待ったなしの状況下にあります。
 また、管路の漏水や損傷原因の中で最も多くを占める幹線管きょへの取付管の直接取付けの問題が近年大きくクローズアップされており、この問題の根本的な解決としてのマンホールへの取付け(横引き方式)への変更、および拠点マンホールへの改築などを含む管路マネジメントシステムの確立を考えるとき、改築技術の重要性が再認識されてきています。
 それに対して我々推進技術にかかわるものとしては非開削による改築更新を提案して普及させなければなりませんが、現状は技術を開発提案すべき我々の力不足、発注者、設計者側の理解不足のどちらかあるいは両方で、非開削による改築更新は広く普及とまでは至っていません。普及を妨げる具体的な理由としては工事費の高止まり、道路占用の期間、近接構造物の損傷懸念、小型マンホールからの施工不可などがあると思われますが、いずれも今までの推進技術の進化発展の歴史を振り返れば、克服できない課題ではないと考えます。
 改築更新すべき老朽管の管材料を見てみるならば、ヒューム管が圧倒的に多いと思われますが、特に古い管路では陶管、比較的新しい管路では塩化ビニル管もその対象と考えなければなりません。塩化ビニル管の場合はまだ耐久年数までは至ってはいませんが、その埋設状態(外荷重の載荷状況)によっては変形(たわみ)が多く発生して、不明水の原因のひとつになっています。また、改築管路に拡径が要求される場合は必ず改築更新が必要ですし、新設管路を増補管として新たに埋設する場合においても既設管路を撤去充填しなければならないようなケースもあります。
 このように開発すべき課題は多くありますが、今月号では改築推進をテーマとして、その必要性、管更生工法との住み分け、工法の分類(切削、引抜、圧砕など)比較などを各分野の方々に解説していただくことといたしました。
(文:中野正明 編集担当:石北正道)

2019年10月号

特集/推進工法のバリエーション

 推進工法は19世紀後半、アメリカ北太平洋鉄道横断工事にて世界ではじめて採用された工法です。我が国においては、昭和23年(1948)国鉄尼崎港線軌道下工事において推進工法が初めて採用されました。以来、70年の歴史を経た今日においても様々な技術開発のもと多様かつ高度な技術として発展を遂げてきました。その要因のひとつとして下水道の普及が大きく関わっています。
 昭和30年代の高度経済成長期に工業化が急速に進み、さらに都市部の人口が急増したことにより、工場からの排水や生活排水による公共用水域の水質悪化が深刻な問題となりました。昭和45年(1970)には、いわゆる公害国会によって下水道法が改正され「公共用水域の水質保全に資すること」の一項が加えられ、国はナショナルミニマムとして下水道の普及率を欧米並みに向上させるため、下水道整備を急速に進める施策を実行しました。
 その下水道の普及にひと役買ったのが推進工法でした。交通量の多い大都市の下水道整備には、工事個所の周辺環境への影響が少ない推進工法が多く採用されました。自然流下を基本とする下水道管きょの敷設には、管路の縦断線形において厳しい施工精度が求められ、さらに地盤条件など施工上の様々な厳しい条件に対応した技術の開発によって、世界のトップレベルの技術と称されるまでになりました。
 このような時代背景のもと、下水道分野で進歩、発展してきた推進技術は、我々の生活に欠かせない電気・ガス・上水道・通信網といった地下インフラ整備や、農業・工業用水路の構築、道路や鉄道駅舎の構築など地下空間築造にも採用されるようになりました。
 本特集では、様々な分野に活躍の場を拡大した推進工法の現在を紹介しております。みなさまの業務の一助になれば幸いです。
(編集担当:植木貴幸)

2019年9月号

特集/直接発進と直接到達 その2

 今月の特集は先月に続き「既設構造物間における推進施工技術」の「直接発進と直接到達」です。都市部の地下空間には、上下水道、ガス、電気、通信等のライフラインが縦横に敷設され、さらには鉄道、道路、共同溝といった極めて重要な構造物が多く建設されています。そのうえで成り立っている社会・経済活動に大きな影響を与えることなく維持しながら、過去に建設された建築物・構造物等を新陳代謝し、さらに新しい防災施設やライフラインの建設を進めることが求められています。
 推進工法においては、立坑を必要としない既設構造物からの発進・既設構造物への到達を要望され技術開発が行われてきました。掘進機の小型化や分割化によってマンホールからの発進、到達においては掘進機の回収に必要なスペースを小さくする方法だけでなく発進側に戻してしまう、さらにはそれを人的作業でなく自動で行う等の目を見張る進展を遂げています。しかしながら、既設構造物での施工は、発進・到達部を開口するために発生する構造物欠損に対する補強や地盤の安定確保、構造物への推進反力の取り方等、決められた仕様の汎用的な立坑での施工とは異なり、様々な条件下での施工となります。
 先月から続く本特集では、たくさんの施工事例を紹介し、それぞれの現場条件での施工における工夫等を共有できたらと考えています。平成29年(2017)にも「既設構造物への直接到達」として2か月連続の特集を組みました。「既設構造物間における推進施工技術」は需要が高まっているというよりも、当たり前のモノになっています。
 本特集が、皆さまの業務の一助となれば幸いです。
(編集担当:森治郎)

2019年8月号

特集/直接発進と直接到達 その1

 都市周辺では、地下鉄、地下道、地下室、ライフライン等が重層構造のように輻輳しており、現在もそれらのさらに深い位置や合間を縫うように地下施設が築造されている。そして、立坑すら構築するスペースがなくなったことから既設構造物間での推進施工が要望され「既設構造物への到達・既設構造物からの発進」の推進技術が発展してきた。
 当初の既設構造物の施工は、大中口径では通常の掘進機を既設構造物に到達させ、その掘進機を単純にその位置で切断解体する地中残置が行われていた。掘進機の再使用はできない方法であった。徐々に既設構造物施工の需要が増えるにしたがって、小口径においては、掘進機を分割できる構造とすることで、マンホールでの発進到達が可能となり、大中口径においては施工した管路内を通して、掘進機を回収するなどの手段が開発され、施工性・経済性は向上した。
 現在では、既設管路から枝分かれする管路を築造できる既設管路間での施工や到達構造物の地点で作業できない環境においても人的作業を行わずに回収できる掘進機も存在する。それらの技術は、ライフライン敷設のためだけではなく、地下道路構築などの新たな用途へと進展している。
 また、既設構造物での施工には、発進・到達部を開口するために発生する構造物欠損に対する既設構造物の補強や構造物への推進反力の取り方、既設構造物内での資材の搬入搬出などなど多くの技術課題が存在していたが、昨今の「既設構造物間の推進施工技術」は、多数の施工実績、経験からそれらの課題をも克服する技術、工夫が生み出されてきた。しかし、それでも、既設構造物間における推進は、決められた仕様の汎用的な立坑などと異なり、多種多様な施工条件下での施工が求められることから、課題は尽きない状況であると考える。
 本特集では「既設構造物間における推進施工技術」のための、最新の掘進機などの機材設備を掲載するとともに、施工上における工夫も事例と一緒にご紹介いただくことで、さらなる本技術の進展の参考になればと考える。
(編集担当:佐藤徹)

2019年7月号

特集/推進技術・最前線

 下水道展は、下水道事業の管理者である地方公共団体等を対象に、全国の下水道関連企業(団体)の技術開発の成果に基づき、下水道に関する幅広い分野の最新技術・機器等を展示、紹介するとともに、一般の方々に下水道について理解と関心を持っていただくことを目的として毎年開催されている国内最大規模の展示会です。
 2019年の下水道展は8月6日(火)〜9日(金)に横浜で開催され、この展示会に(公社)日本推進技術協会会員による推進技術に関する展示が行われます。それらの内容は、推進工事の施工技術、管材、機械、周辺技術と多岐に渡ります。現在まさに開発中の最新技術から過去に培われてきた現在の主要技術までが展示されます。またこれらの技術内容はその時代のトレンドを反映し、さらに次世代を先取りする展示も数多く出展されています。この展示会の特徴として、実際に現場で使用されている機械や実物の管材等が展示されています。しかもそれらの機能や特徴をわかりやすくするための工夫もなされています。普段これらの機械や材料は地中にあり容易に近づいて見ることはできませんが、この展示会では360度から観察が可能であり、推進技術の理解に役立つと思います。さらに展示会の各ブースの説明員はその分野の専門家であり、生きた情報を得ることが可能です。この展示会を見ることで推進技術の全貌が短時間でつかむことが可能であると思います。
 本号ではこの下水道展に出展される会員の技術内容を出展者ごとに、概要、技術の位置付け、特徴およびセールスポイント、実績等を写真入りで各社工夫をこらしわかりやすくまとめています。この記事で概略をつかみブースで説明を聞くことで内容を深めることができると思います。逆に今回の下水道展に展示されていた内容の記録として残すこともできる一冊になると考えます。
 推進技術は昭和23年(1948)国鉄尼崎港線軌道下工事から70年の歴史を経て多様にそして高度に発達してきました。この間下水道の普及に寄与し、下水道普及率は概ね80%(下水道利用人口/総人口)となっています。今日この推進技術は都市の地下構築技術としてなくてはならない確固たる地位を築いています。この推進技術のさらなる発展と新しい分野で活用されることを期待します。そしてこの号が推進技術の「しるし」となれば幸いです。
(編集担当:西田和也)

2019年6月号

特集/進化し続ける推進技術

 国内初の推進工法の採用は、(公社)日本推進技術協会のwebサイトによりますと、およそ70年前の「昭和23年(1948)の大阪ガス発注における旧国鉄・尼崎港線の軌道下横断工事(ガス管用さや管、呼び径600、鋳鉄管延長6m)の30tf手押しシップジャッキ1台使用」と記載されています。
 刃口式推進工法を原点とした推進技術はその後飛躍的に進化し、泥水式、土圧式(泥土圧式)、泥濃式などの掘進機とともに中押や元押装置、あるいは工法を支える様々な推進管材の開発と性能の向上、また、測量技術や滑材・推進力伝達材(クッション材)をはじめとする周辺技術など、多方面の技術的な開発・改良が行われました。その結果として、世界に誇れる今日の長距離・曲線施工や呼び径4000の大断面推進、1スパンが約1,500mの超長距離・曲線推進を可能とし、信頼性の高い推進技術を成し遂げています。
 小口径管推進分野では、昭和50年(1975)、労働省(当時)通達によって内径80cm未満の推進工法では管内の有人作業が制限されました。呼び径800未満の小口径管推進工法は、これを契機として掘削・排土などに省力化が図られ、その実績を飛躍的に伸ばし、その後、塩化ビニル管を推進する低耐荷力管推進工法も導入され、長距離・曲線施工においても実績を挙げています。このほか、小口径管推進分野では、ケーシング立坑など小型化に向けた技術開発も進んでいます。
 本特集では、世界最高の技術レベルとされている我が国の超大口径管、大中口径管、小口径管推進工法等の最新技術とあわせて、これを可能とした管材や測量技術などの各分野の技変遷とともに最新の技術をわかりやすく紹介し、また、矩形断面推進のほか、改築推進技術や特殊な推進工法事例なども掲載しています。
(編集担当:阿部勝男)

2019年5月号

特集/浸水対策と推進工法

 最近の豪雨としては、九州北部豪雨(2017年7月)、平成30年7月豪雨、台風21号(2018年9月)、台風24号(2018年10月)があり、マス・メディアにより大々的に報道され鮮明に記憶されている方々も多いと思います。これらの豪雨により、人的・物的に甚大な被害がもたらされ、復旧には前例のないような膨大な費用と時間を要する事態となっています。我が国は豪雨・地震等の自然災害と背中合わせであることを再認識させられた事例ではないでしょうか。
 これらの災害は河川の氾濫に伴う被害も多く下水道では太刀打ちできない側面もありますが、下水道の役割として考えられることは、集中豪雨に対して降雨初期に避難をしやすくする、避難できる時間をできるだけ確保する「避難できる住民を増やす」等への役割の一旦を担っているのではではないか、と最近の豪雨に遭遇するたびに考えます。
 一方、ハザードマップの住民の理解度のアップや行政の周知徹底方法をあわせて再考する必要があるのではないでしょうか。下水道は豪雨後の排水をスムーズに行い復旧作業の効率化、公衆衛生の確保としての役割も重要な位置づけです。
 今後の雨水対策としては、降雨強度のアップに伴う雨水幹線の整備をはじめ遊水池、調整池の整備等、複合的な対策が必要です。下水道管きょにおける豪雨対策としては、雨水幹線の整備、既設幹線相互の評価・活用の構築、各幹線の水位等観測情報の収集と情報を活用した浸水情報の提供、内水氾濫にかかわるタイムラインの作成等多面的な対応が望まれるのではないでしょうか。
 今回は推進技術を活用した豪雨対策をはじめ、幅広い技術の紹介も視野に入れた編集を心がけました。
(編集担当:石北正道)

2019年4月号

特集/大土被りと高水圧対応

 我が国の大都市の道路下には、地下鉄や上下水道、電気、ガス、通信等の様々なインフラ施設が敷設されています。そのため、新たな構造物の建設には、既存の輻輳した多様な構造物を避け、次第に深い位置へと大深度化が進んでいます。特に近年多発する集中豪雨に対応した貯留施設等は、既設の構造物を避けた地下空間に設置されるケースが多く見受けられます。このような中、工期の短さや簡易な設備で、交通規制を最小限に抑えられる推進工法の採用が一般化しており、大土被りや高水圧といった条件下での施工にも適用されるケースが増加しております。
 推進工法は、ご存知のとおり掘進機と推進管を用いて、管列を推進することで管きょを構築する工法です。したがって、大土被り・高水圧といった条件下においては、掘進機については駆動部や可動部等の耐水圧対策が必要となり、立坑および坑口についても大きな土圧や水圧に対処する必要があります。
 また、管材についても対応が必要です。下水道推進工法用鉄筋コンクリート管(JSWAS A-2-1999)には内水圧に対する規定がなく、継手性能も耐水圧0.2MPa(JC)までの対応となっていました。そのような中、JSWAS A-2が2018年に改正され、雨水貯留などの圧力状態を許容できる内圧管が新たに規定されるとともに、従来よりも水密性の高い継手0.4MPa(JD)が追加されました。また、0.4MPaを超える範囲についても、鋼コンクリート合成管などを使用することでさらなる大土被りにも対応が図られています。この規格改正は、推進工法による管きょの構築が大土被りや高水圧といった条件下においても一般化していることの表れではないかと考えられます。世の中のニーズにあったインフラ整備は、今後も間違いなく必要なものであると思っております。
 今回の特集では、掘進機、地盤改良、管材といった様々な視点からの大土被り・高水圧対応技術をご紹介させていただき、今後も増えるであろう大土被りの推進工事に対する技術の活用とさらなる向上につなげていきたいと思っております。
(編集担当:人見 隆)

2019年3月号

特集/小土被りと近接施工

 我が国の都市は、流通・交通の要衝、山地と平地の接点等にあり、氾濫原などの低平地に人やモノが集積し拡張、発展しているところが多く見られます。また、都市の地盤は、地勢の変遷から基盤が変化に富み、表層は複雑な堆積層により形成され、さらに都市の発展に伴い造成、埋め立て等の人工改変地も増大してきました。
 このような都市では、土地の有効利用、活動の利便性向上等のため、地下空間の利用が進み、後発の施設ほど複雑に設置され、また、重要構造物も混在し輻輳している状況にありますが、今後、これらのインフラは、老朽化の進行に伴い改築更新の需要が高まることは必至です。また、都心部に限らず郊外でも、上下水道、ガス等のパイプラインに加え、都市防災の観点から電気や電話等のケーブルの地下埋設化等が進んでおり、近い将来に同様な状況が迫っています。
 設置当時には開削工事(明かり)で確認できた状況も、改築時にはそれも難しい状況となっています。しかし、既存の施設(ネットワーク)機能を活用しつつ、維持管理のしやすい施設の改築を順次行うためには、連絡施設であるパイプラインを安易に「避けて(下げて)通す」だけではない、発想と工夫による取り組みが必要ではないでしょうか。
 そこで、本号では、今後、技術の発展が大きく期待される次の事項について着目し、特集記事を募ることとしました。
?現在の状況をより正確に把握し、共有するための調査技術
?既定のルールに囚われず、より早期に効果を得るための計画技術
?厳しい制約条件に安全に対応するための施工技術
 改築施設の検討にあたっては、既存の埋設物、占有物との競合を前提とする必要があり、新設構造物の使用や施工に伴う影響度合いを地上・地下ともに適切に評価し、新たに加わる施設の占用位置の設定、施工法の選定等を行い、さらには、施工時・施工後の安全・安心の確保も必要となります。
 ここでは、特に縦断線形の制約、既存基幹施設の深度制約、施工に伴う影響制約等が厳しい状況下での円形管、ボックスカルバートの施工事例を中心に取り上げました。なお、近接施工時の影響軽減策には地盤改良、パイプルーフ等が想定されます。
(編集担当:田口由明)

2019年2月号

特集/岩盤掘削の施工事例から学ぶ

 岩盤・巨石の推進工事は、推進工法進展の象徴のひとつであり、この施工困難な地山に対しては、各工法の保有する技術が網羅されています。日本の地層は、岩盤地山が同一種類で均一な岩盤条件だけではなく、堆積岩の中に泥岩、砂岩が激しく褶曲しながら混在する、崖錐が掘削断面にかかるなどの状況も多くあり、単に高強度、高硬度の岩石を掘削するだけの技術では、岩盤推進工事ができないことからだと考えます。
 岩盤推進の変遷は、大口径では切羽開放型の刃口式推進工法で行うのが主流で、ロードヘッダが装備された刃口型の掘進機での推進、時によってはずい道と同じように発破などを用いて岩盤破砕を行いながらの施工が行われ、その後、徐々に密閉型の中口径岩盤掘進機が開発製造されました。現在では小口径においても優れた掘進機や関連技術・施工方法があり、その施工例も多数報告されています。近年では雨水対策のための管路敷設工事が発注され、大口径呼び径2000以上の岩盤推進施工が再び多くなっています。そして、かつての岩盤対応推進施工方法よりさらに進展した掘進機や周辺技術が適用されていると推察します。
 本特集では、各工法の岩盤推進の施工事例から、その岩盤推進工法の最先端技術を紹介いただきます。岩盤施工においてはトラブルの発生も多くあると考えます。そこで、岩盤施工でのトラブル発生とその解決方法の知見についても、記述していただければ、今後の推進工事の製品開発、推進工事施工の参考となると考えます。
(編集担当:佐藤 徹)

2019年1月号

特集/推進技術の夢を追う

 今年は我が国で推進工法が最初に施工されてから72年目になり、人間でいえば壮年期から老年期になる年数ですが、建設技術の世界ではまだまだ少年期から青年期だと認識しています。例えば、同じような地下に管路を埋設するシールド工法はその発明から200年を経過していますし、山岳隧道工法などのその歴史は数千年にもさかのぼるようです。様々な時代を経て、昔の技術では考えられなかったような推進技術の「夢」を人々の努力が「現実」へと変えてきました。
 現在では既設管路・既存トンネルなどの老朽化対策、水害対策としての大規模地下空間の築造、本格的な海外展開など、現代ならではの課題やチャレンジするべきことが数多くあります。その課題をクリアしていくことが未来へ続く夢の第一歩として、推進工法のさらなる技術開発や市場の開拓がなされることとなり、推進技術は100年以上発展し続けることでしょう。
 今月号では、これからの未来へとつながるであろう推進技術の「夢」をテーマに特集してまいります。
(編集担当:中野正明)

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